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内容詳細
オリゲネス(185-254年頃)の時代、初期キリスト教は未だ確固とした地位を得られぬ非合法宗教と見なされ、周辺世界から様々な批判を受けていた。彼はアレクサンドリアで聖書解釈を通してそれらの批判に答え、キリスト教のアイデンティティーの確立に努めた。
アレクサンドリアは多様な文化と宗教の出会いの場として異質文化の混交・融和を成し遂げ、とくに古代図書館を中心とした文献学の一大発展地であった。オリゲネスは、アレクサンドリアの文献学的方法を継承し、「聖書を聖書によって解釈する」という内在的聖書解釈の方法を駆使し、後の教会史における聖書解釈を方向づけた。
本書はヘレニズム思想、グノーシス主義、ユダヤ教との競合関係の中で生み出されたオリゲネス復活論の成立と特徴を、聖書解釈の方法に焦点を当てて考察、オリゲネスの思想とその時代の全体像に迫る画期的業績である。
彼の復活論争は、キリスト教の復活理解が不合理な教えではないこと、当時のヘレニズム世界の死生観を聖書に基づくキリスト教の視点で置き換えることを意図した。それは読者を正しい聖書解釈に導きその最終判断を読者に委ねるものであった。彼の復活理解はギリシア思想の二元論とも、グノーシス主義の脱身体論的救済論とも違うばかりか、初期キリスト教の正統的教会が展開した復活の肉体性を強調するのとも異なる、パウロの影響を受けた「終末論的様態変化」であった。また著者は、後に聖書解釈の一元化が強まる中で解釈の余地を残す彼の方法が批判され、異端宣言される経緯を明らかにする。