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内容詳細
京都大学での昭和41年から58年まで18年におよぶ「中世哲学」講義を全5巻に収録,他に類のない貴重な記録である。
本巻では退職1年前の昭和56-58年度までの3年間の講義を収載する。「中世哲学の基本を特徴づけているものとは何か」という関心の下に継続された講義の最終巻となる。
人間知性が「第一に認識するのはエンスなのかエッセンチアなのか」という問いから始まる56年度の講義は,第一に認識されるのは「エンスのエッセンチアである」との答えが与えられ,その後に考察は存在の根原から認識(光)の根原としての神の認識へと向かう。
57年度はアンセルムスの神の存在証明に対するトマスの批判を吟味し,両者が神を「絶対に必然的に存在するもの」という共通の認識を持つとともに,違いも指摘した。
58年度は存在を論証するために,「もの」と「しるし」の考察を通して人間の行為を取り出し,行為の自由が検討されるとともに,それは「間」において成立するとされた。
講義では初めに立てられた問いに答えつつ,あらたな問いが出され,考察は広く深く展開していく。山田は答えを見出すだけでなく,常に途上にある「哲学すること」の現場を見せ,学生にその魅力を伝えながら「哲学すること」自体へと促していく。
読者が本講義に耳を傾け,キリスト教や中世哲学,さらにヨーロッパの思想的営為の多様な意味に触れたならば,故人にとってもそれに勝る喜びはないであろう。
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