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内容詳細

中世において思想表現手段はラテン語によるものであった。本シリーズは、エックハルトの思想的営為の中核ともいうべきラテン語著作を、全編にわたり平明な訳文で紹介するはじめての画期的な著作集である。

本巻ではエックハルトのパリ大学教授時代の所産である「出エジプト記」と「知恵の書」の註解を扱う。当時の聖書註解は今日とは違って単なる聖書の逐語的解釈ではなく、註解をとおして自己の哲学を展開する場でもあった。ことにエックハルトの聖書註解は通常のものとは異なり、少数の聖句を選んで、それに自在な哲学的解釈を施した独創的なものである。ここで扱われている二つの聖書註解は、わが国ではあまり知られていない難解なものであるが、訳者はその根底に潜む論理を鮮やかに掬い上げて、平明な日本語として訳出した。

「出エジプト記註解」では神の名(本性)をめぐる「神は存在である」という神名論の主題を「存在のアナロギア」により論究し、「知恵の書註解」では通常の範疇を超える超越範疇論を展開することにより、無と存在、善と悪などに見られる複雑な様相が解きほぐされていく。これらの註解をとおして神の存在概念がもつ豊穣さが論理的に明らかにされる。

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