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内容詳細
宗教問題が世界情勢を左右する昨今、キリスト教という視点からヨーロッパ史を学ぶことで世界の見え方が変わる――。本書は、キリスト教がヨーロッパ中近世の社会にいかなる影響を与えたのか、11の個別テーマと多彩なコラムを通じて概観する。出来事の羅列ではなく、社会との関係で重要なテーマを設定することでキリスト教がヨーロッパ、さらに隣接する地域で果たした役割を明らかにするとともに、ユダヤ教とイスラームを加えた三つの一神教の関係をもあぶりだす。
【目次】
序 章 キリスト教史がわかればヨーロッパ史がわかる(甚野尚志・踊 共二)
1 キリスト教からヨーロッパ史を読み解く
2 キリスト教とはどのような宗教か
3 中世のキリスト教
4 近世のキリスト教
5 迫害と寛容の近世
6 現代を理解するために
コラム1 古代の密儀宗教(印出忠夫)
第1章 キリスト教の東と西(三浦清美)
1 神と人間の距離をめぐる一神教のドラマ――イコノクラスムまで
2 スラヴ語典礼の誕生――キュリロス,メトディオスのスラヴ人宣教
3 キエフ・ルーシに到来したスラヴ文語によるキリスト教――東方正教の西方キリスト教への敵愾心
4 東西教会を分ける相違点――キリストの代理人としての統治者
コラム2 イコノクラスム(中谷功治)
第2章 罪と贖罪(甚野尚志)
1 「公的贖罪」の時代
2 「私的贖罪」――アイルランドとブリテン島の「贖罪規定書」
3 西欧初期中世の贖罪
4 良心の検討と告解の義務
5 聴罪司祭の教育
6 宗教改革期への展望
コラム3 瀆 神(とくしん)(神齋藤敬之)
第3章 禁欲と戒律――修道院(鈴木喜晴)
1 古代末期の修道制
2 中世前期の修道制
3 一二世紀の教会改革と修道院
4 中世後期の宗教生活と托鉢修道会
コラム4 修道制と人文主義(石黒盛久)
第4章 正統と異端(後藤里菜)
1 キリスト教と、異なるものの排除
2 アウグスティヌスと異端
3 中世キリスト教世界の成立と異端
4 カタリ派をめぐって
5 異端討伐の心性
コラム5 中世のユダヤ人迫害(佐々木博光)
第5章 聖人と奇跡(多田 哲)
1 聖人と奇跡の現在
2 イエス・キリストの奇跡
3 古 代
4 中世前期
5 紀元一〇〇〇年以降
コラム6 列 聖(小林亜沙美)
第6章 巡 礼――中近世スペインのサンティアゴ巡礼(関 哲行)
1 普遍的宗教現象としての巡礼
2 神話とクロノロジー
3 サンティアゴ巡礼の実際
4 聖地のユートピアと慈善
5 アメリカ植民地への「移し」
コラム7 東方のキリスト教世界(辻 明日香)
第7章 聖 書――聖なるモノ,俗なるコトバ(加藤喜之)
1 戴冠式から書店の聖書へ
2 中世末期――民衆と聖書
3 人文主義――聖書原典という源泉へ
4 ルターの革命的な発見――「神の義」という裁き,あるいは福音
5 典礼改革と翻訳――聖書と民衆の接点
6 民衆と英語聖書と革命――政治的な影響
7 聖書の力を封じ込める――批判的聖書学の誕生
8 光あれ!――脱聖化された聖書と十字架上のイエス
コラム8 メシアとキリスト(岡田勇督)
第8章 戦争と平和(皆川 卓)
1 従軍する聖職者
2 「暴力」の誕生
3 「戦争」「平和」の基準としての「国家」
4 「聖戦」の登場
5 聖戦と正戦
6 聖戦の終焉
コラム9 レコンキスタ(黒田祐我)
第9章 宗教改革(踊 共二)
1 宗教改革をめぐる通説
2 ルターのドイツ宗教改革における伝統と革新
3 ツヴィングリの宗教改革
4 カルヴァンと宗教改革のヨーロッパ的拡大
5 イングランドとスコットランドの宗教改革
6 近世のキリスト教改革
コラム10 近世のカトリシズム(坂野正則)
第10章 魔女迫害とキリスト教(小林繁子)
1 魔 女――悪魔の同盟者
2 魔女迫害のキリスト教的背景
3 世俗的魔女裁判と支配者のキリスト教的観念
4 神学者による魔女迫害をめぐる議論
5 反カトリック感情を超えて
コラム11 教会とジェンダー(黒川正剛)
第11章 寛容と多様性――思想・統治戦略・生存戦術(安平弦司)
1 寛容批判と寛容史
2 多様性をめぐる思想
3 多様性を管理する統治戦略
4 多様性を生き抜く生存戦術
5 寛容と多様性を歴史学的に考える
コラム12 「隠れムスリム」の世界(押尾高志)
あとがき
人名・事項索引