税込価格:5940円
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内容詳細

本書は、日本近代の無教会信仰者、伝道者である内村鑑三の福音の中心、聖書の奥義となる「再臨信仰」に関する研究である。それはまた、この戦争の新世紀のなかで、ときに旧約の風前の籾殻(もみがら)の如くに生きる、人の救済への途をたどる文学・批評的な考察でもある。
旧約の森と再臨宇宙をプロローグに、ドストエフスキー文学のニヒリストの系譜、新約の罪と愛をめぐるユダとイエスの物語、神の国と地上の国、インマヌエルと再臨、非戦論ととともにある内村鑑三の再臨信仰への途、大正期の再臨運動、再臨のキリストと臨(きた)りつつあるイエスを経て、エピローグに生命(いのち)の水の河の辺(ほとり)へと至りつく。
その永遠に涸れることのない一条(ひとすじ)の河は、創世記の原初の楽園を潤したその源(みなもと)から、旧約の幾重もの歴史の地層を通り、イエスとともにはじまる新約の福音書、パウロなどの信仰書簡からヨハネ黙示録の新しい天地、都の大路の中央まで途絶えることなく流れている。そこには臨りつつあるイエスとともに、万人救済=再臨の風景が広がり、生命の水音が響く希望の物語がある。

【目次】

序 詞 人は皆風の吹き去る籾殻(もみがら)の如くに

プロローグ 旧約の森と再臨宇宙――『旧約における超越と象徴』との対話
1 魂のこと――再臨信仰の森へ
2 旧約の森のなかで――響き合う声
3 旧約学と解釈学的経験の系譜――『旧約における超越と象徴』
4 贖罪と再臨――永遠の現在と再臨宇宙
5 「此の書成りて今や汝は死すとも可なり」――増補新装版との対話
6 Rejoice ! ――喜びを抱けリジョイス!
第一部 悪魔の跳梁と黄金時代の夢――ニヒリストの系譜
1 スタヴローギン――黄金時代の夢
2 神と悪魔――楽園喪失パラダイス・ロストから
3 精神の地下室――地下生活者と娼婦リーザ
4 スヴィドリガイロフ――『罪と罰』
5 キリーロフ――『悪霊』
6 スメルジャコフとイヴァン――『カラマーゾフの兄弟』
第二部 イスカリオテのユダ――罪と愛の物語
1 罪と悪魔の形象――神の影としての自由
2 イスカリオテのユダ――福音書のなかのユダ
3 カール・バルトのユダ像――棄てられた/選ばれた使徒
4 さまざまなユダ証言――歴史のなかのユダ
5 日本文学のなかのユダ――遠藤、太宰、芥川
6 内村鑑三のユダ講解――罪と救い
第三部 神の国と地上の国――インマヌエルと再臨
1 地上の国と最善説――ヴォルテール『カンディード』
2 あなたはどこにいるのか――神の呼び声と応答
3 神の国と地上の国――ブルームハルト父子と再臨
4 滝沢克己の『神の国の証人ブルームハルト父子』論
――キリスト再来、終末の日、イエスの時
5 天然詩と地上の国――内村鑑三の信仰詩の宇宙コスモス
6 内村鑑三の非戦論と再臨信仰――塵戰(ぢんせん)又た塵戰(ぢんせん)、……
第四部 内村鑑三における再臨信仰への途――信仰の階段と同時代
1 キリスト教受容と信仰の三大時機(モメント)――第一時機
2 十字架と贖罪の回心――第二時機
3 再臨信仰への途――伝道の三〇年と第三時機
4 再臨信仰と再臨運動――大正社会と再臨待望
5 再臨信仰の理解――同時代のなかで
6 藤井武と再臨信仰――来世への希望
第五部 内村鑑三と再臨信仰――臨りつつあるイエスと生命の水の河
1 孤独と再来――『聖書之研究』の創刊と来世観
2 来世と復活――ルツの死から再臨信仰へ
3 再臨運動高揚期の再臨論――一九一八年前半
4 キリスト再臨の待望――一九一八年後半
5 再臨運動衰退期へ――一九一九年以後
6 贖罪信仰と愛の福音――内村鑑三と藤井武
エピローグ 生命の水の河の辺ほとりで――再臨の風景


1 『内村鑑三全集』における再臨・再臨信仰著述一覧
2 内村鑑三によるキリスト再臨に関する主な新約聖書の章節
3 引用・参考文献・再臨関連文献
初出・典拠等について
あとがきに代えて
再臨のキリストと臨りつつあるイエス――戦争の新世紀のなかで
索 引

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