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内容詳細

京都大学の学部生に向けた昭和41年から58年(1966-83)まで18年に及ぶ「中世哲学」の自筆講義録を全5巻に収めた,他に類のない貴重な記録である。講義は明快な語り口とともに,そのつどの関心や研究成果を織り交ぜ,中世哲学の意味や意義,そして歴史的に形成されてきた中世哲学の背景など,多様なヨーロッパ中世への招待となっている。
本巻では昭和53-55年度までの3年間の講義を収載する。
初めにロゴスとしての預言者イエスへの問いに始まり,旧約のイザヤの「ことば」を中心に,預言者に託された神の「ことば」としての「ロゴス」を考察する。イスラエルの民がイスラエル王国とユダ王国に分裂して苦難の道を歩む中,時々に発せられる預言者の「ことば」を吟味することにより,旧約世界とユダヤ教の意味が明らかにされる。
次にトマスの真理論について,『真理論』(『真理についての討論集』)に即して神を認識主体とする神の認識論を論じつつ,『神学大全』により人間知性の自己認識の多面的な姿を丁寧に紹介する。さらに『真理論』の構成を分析して,トマス認識論の特色や真理の定義の問題を考察する。
最後にアウグスティヌス『ソリロクィア』における「真なるもの」の定義を試み,中世認識論の位相を解明する。
真理論は著者が長年にわたり関心をもっていたテーマであり,その独自の視点や精密な分析は,学生ばかりでなく研究者にとっても示唆に富むものであろう。

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