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内容詳細

キリスト教における人間観の根幹は「神の像としての人間」である。そこでは「像」という人間の限界とともに,「神の」像としての人間の尊厳もまた謳われている。しかし西方教会では,「神の像」としての人間の自然本性が毀損,破壊され,人間は自ら罪を犯す前にすでに原罪を負うていると理解されてきた。
原罪の教義はアウグスティヌスの原罪理解の影響のもとでの古代の教会会議の諸決定が,トレント公会議(1546年)の「原罪についての教令」で追認される。だが,キリスト教の原罪理解と人間観は,18世紀の啓蒙主義的人間観と,19世紀の進化論の登場を経て後退し,生物学的観点やジェンダー論,フェミニスト神学の現代的視点からも批判が上がっている。
しかし今日,圧倒的な技術力を手にした人間が,凄まじい殺戮と破壊をもたらしている現実は,原罪論がもつ人間観を改めて問い直すことを要請し,その考察は神学のみならず広く人文研究の責務と言えよう。
本書はアウグスティヌスからアンセルムス,トマス,オッカム,またテルトゥリアヌスやオリゲネス,ペラギウスおよび原罪が教義とされていない東方教会の状況を考察,さらにビンゲンのヒルデガルトや十字架のヨハネなど多岐にわたる原罪論に光をあて再考する。
技術の先端化や貧富の格差,グローバル化など混迷する現代において「人間とは何か」を問う試みである。

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