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内容詳細

横倉義武氏(日本医師会前会長、世界医師会前会長)推薦!

「終末期医療を考える上で大いに参考になる一書」

どんな人にも平等に訪れる「死」。

高度な医療技術の発達により、意識が回復しない状態でも、栄養チューブや様々な機器をつないで延命できるようになりました。

本人の希望と関係なく死が引き延ばすことも可能になった今、自分の〈死の迎え方〉を人任せにしないためには、どのような準備をしたらよいでしょうか。

本書は、救急医療とホスピスの現場で活躍するドイツ人医師が、終末期に人体に起こる変化と、病院で施される処置を詳しく紹介しながら、患者自身が、医師や家族との対話をふまえて意思表明することの大切さを提言します。

巻末には、法的に熟慮された「事前医療指示書」のひな型も収録。

一人ひとりの希望に沿った最期を迎えるための最良の手引き!!

 

*目次より*

1 自己決定

2 事前医療指示書

3 消極的死亡幇助と積極的死亡幇助

4 緩和医療

5 自死と自死幇助

6 断食死

7 蘇生

8 自然栄養と人工栄養

9 昏睡と〈覚醒昏睡〉

10 重度認知症

11 最後の日々と時間

12 心臓死と脳死

13 臓器提供

14 展望 死の将来像

付録 統計資料/患者さんとご家族のための支援と助言/ひな形見本

 

【著者】

◆ミヒャエル・デ・リッダー(Michael de Ridder)

救急医療専門医。ベルリンの病院で救命救急部門主任医師として勤務。ホスピスを共同設立、緩和医療財団理事長を兼務。

著書 Wie wollen wir sterben?: Ein ärztliches Plädoyer für eine neue Sterbekultur in Zeiten der Hochleistungsmedizin,DVA, 2010(邦訳『わたしたちはどんな死に方をしたいのか?--高度先進医療時代における新たな死の文化の提言』島田宗洋/ヴォルフガング・R. アーデ訳、教文館、2016年)Welche Medizin wollen wir?: Warum wir den Menschen wieder in den Mittelpunkt aerztlichen Handelns stellen muessen,DVA, 2015(邦訳『わたしたちはどんな医療が欲しいのか?--人間中心医療を取り戻すための提言とその理由』島田宗洋/ヴォルフガング・R. アーデ訳、教文館、2020年)などがある。

 

【訳者】

◆ヴォルフガング・R. アーデ(Wolfgang Roland Ade)

1947 年生まれ。ホッヘンハイム大学医学部、ルプレヒト- カール大学医学部、ドイツ国立がんセンター細胞腫瘍生物学研究所、エバーハルト・カール大学医学部などで学ぶ(医学博士)。サノフィ・アベンティス(株)を定年退職後、現在は、獨協医科大学特任教授、公益財団法人日本国際医学協会評議員。

 

◆島田宗洋(しまだ・むねひろ)

1939 年、兵庫県生まれ。東京大学医学部医学科で学ぶ(医学博士)。国立小児病院心臓血管外科医長、国立療養所多磨全生園循環器科医長、救世軍清瀬病院長などを歴任。現在は、救世軍清瀬病院名誉院長、獨協医科大学特任教授、公益財団法人日本国際医学協会評議員。

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書評

各自が希望に沿った最期を迎える準備のために
〈評者〉長谷川(間瀬)恵美

 著者ミヒャエル・デ・リッダー氏(一九四七生)は救急医療を専門とする医師で、ドイツでホスピスを設立されています。本書『生命との別離』は同氏の三部作、『わたしたちはどんな死に方をしたいのか?』『わたしたちはどんな医療が欲しいのか?』に次ぐ最終作です。アーデ氏、島田氏両医師による読みやすい訳とその労に感謝です。
 本書は三〇〇頁程度で一三の章によって構成されており、個人が責任をもって「人間らしく」人生の終わりを迎えるために、死について、終末期医療についての議論を深める手引書として読むことができます。もちろん、本書はドイツ国内の事例に基づいてドイツ人医師としての立場からその取り組みを執筆されているので、日本の現状とは異なる点も多々見受けられます。それでも他者任せ、医者任せではなく、来るべき死に備えて自分の生命を生きるためにも、本書は十分に具体的な終末期の知識を与えてくれます。
 本書は最初にドイツ基本法によって守られている「人間の尊厳と自由」から、医師としての生命保護義務とそれを上回る患者の自己決定権について明示します(一章)。患者の意思を決定づけるためのリビング・ウイル宣言書(事前医療指示書)に自身で記入する際の注意点が、臓器提供を例に示され、延命治療の是非、死亡幇助について言及されますが、それに対してドイツの立法機関では確固たる判断を下していないこと、また国民アンケートから積極的自殺幇助についての積極的な回答が得られたことにより、ドイツでは緩和医療に対する信頼感が低下していること、つまり緩和医療、緩和ケアの内容と姿勢について問われていること、そして、自死幇助についての著者の立場が説明されます(二─五章)。例えば人工栄養法を拒否する患者の意思、自己決定権を尊重する行為でも、断食死のためのルールを認識しておく必要があるということです。また蘇生術を施す行為、胃瘻を付けたり中断する行為が、いかに患者の死のプロセスにとって望ましくないことであるかについても説明されます。終盤では深い眠りの状態、昏睡の形態、認知症の症状、終末期の兆候、患者の最後の日々と時間について個別に考慮されるべき事柄について言及されます(七─一一章)。こうした死のプロセスの最後に待ち受ける心臓死と脳死という二つの異なった死のかたち、その後の臓器提供(一二─一三章)について解説された最後に、科学の進歩により「死」がコントロールされる未来について想像しつつも、各自が希望に沿った最期を迎えるための準備を心がけるよう促されています。
 今から一〇〇年以上も前にドイツに留学した森鴎外が『高瀬舟』で世に問うた「いのち」をめぐる提言(安楽死、尊厳死、自死幇助、法制定)は未だに解決に至っていません。生命(いのち)について、QOL(生命の質)について問う人、最期までどう生きたいか、いのちをどう終えるか、QOD(善き死)について考えている人にお勧めしたい一冊です。訳者あとがき、そして付録(ひな形見本「事前医療指示書」など)も大いに参考になります。

長谷川(間瀬)恵美はせがわ・ませ・えみ=桜美林大学リベラルアーツ学群准教授