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内容詳細
聖書を書いたのは誰? 聖書朗読で気をつけることは?
そもそも説教とは何?
参加者の素朴な質問を集め、それに答える形で開催する
ウイリアムス神学館のキリスト教講座。
シリーズ第2弾のテーマは〈聖公会の聖餐式における聖書と説教〉。
今さら聞くのはちょっと恥ずかしい、でも、知りたい…。
そんな疑問に答えます!
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――目次より――
第1章 今さら聞けない!? 聖書
1 「聖書」とは何か /2 正典としての聖書 /3 聖書の配列について /4 聖書についてのいろいろな質問
第2章 今さら聞けない!? 聖書朗読
1 聖書日課について /2 聖書朗読について
第3章 今さら聞けない!? 説教
1 説教とは何か /2 説教の現場 /3 説教の内容 /4 説教を準備する /5 子どもと説教
◆著者紹介◆
黒田 裕(くろだゆたか)1969年愛知県生まれ。立命館大学法学部、聖公会神学院卒業。立教大学大学院博士前期課程修了(組織神学専攻)。日本聖公会司祭(京都教区)。司牧の傍ら、日本聖公会管区の委員のほか、平安女学院大学チャプレン、ウイリアムス神学館教員、聖公会神学院専任教員、ウイリアムス神学館教員として務め、2017年12月より同館館長。
書評
素朴な疑問から浮かび上がる現場の知恵と思い
吉田雅人
京都にある日本聖公会の神学校の一つ、ウイリアムス神学館では、二〇一四年春から信徒の方々を対象に「今さら聞けないキリスト教講座」を開講している。この講座は「教会生活は長いのだけれども、今さら聞くのはちょっと恥ずかしい、そのような疑問に応える」ために始められた。
というわけでこの講座では、参加された信徒の方々からの「今さら聞けない」質問に答えていくのだが、ある意味で素朴な質問に答えるのはなかなか難しいものである。というのは、答えの前提となる知識・学説についても知っていただく必要があるからだ。著者はそれらをなるべく専門用語で語るのではなく、丁寧に答えている。従って、聖書学に関する特別の知識を必要とすることなく読むことができるのはありがたい。本書は、このようにして行われた二〇一五年度の講座の講義録をもとに、著者が加筆修正してまとめたものである。
本書は「聖書に関する全般的な説明(項目)」、「礼拝の中で朗読される聖書について(項目)」、「説教とその準備について(項目)」という、三つの章から構成されている。
それぞれに興味深いのだが、中には手厳しい質問も見られる。いくつか紹介してみよう。
・新約聖書は誰が書いたのか
・なぜ福音書は四つなのか?
・ゲッセマネでの祈りは誰が聞いていたのか
・聖書朗読で気をつけることは
・なぜ「説教」というのか?
・説教を聞くときには......
「新約聖書は誰が書いたのか」という問いに対して著者は、パウロの真筆と認められている七つの書簡以外は、誰が著者なのかはっきりとはわからないと説明する。そして「特定の信仰共同体の歩み、つまり現場の営みにおいて聖書が誕生し、読まれ、時代を通じて多くの人びとに慰めと励ましを与えてきた」(三〇頁)と結論づけるのである。
また「聖書朗読で気をつけることは」という問いに対して、著者はR・フッカーの「聖書朗読において恵みの霊が働き、教会の司牧において有用な手段」という言葉を紹介する。そして「会衆席の後ろでも聞き取りやすいような音量や速度で朗読することを心がけるとよいと思います。イエス・キリストを通した神からの福音の宣言がそこに集うすべてのひとに漏れなく伝わるために」(一二九頁)と結ぶ。著者の宣教者・牧会者としてのありようが、ひしひしと伝わってくる一文であろう。
著者はウイリアムス神学館で「説教論」を担当しておられることもあり、「説教」について本書の約三分の一を裂いている。「説教とは何か」という問いから「説教を準備する」という具体的な事柄まで、丁寧に答えている。そしてこの章の最後で、「子どもと説教」という課題を取り上げている。ことに現代社会の様々な環境(ひとり親世帯、児童虐待やネグレクト等々) の中で生きている子どもたちに、どのように聖書の福音を響か せることができるのか、それがわれわれの課題だと言う。そして著者の経験から得た、様々な例を提供してくださる。その上で、「子どもたちは大人が思っている以上に、子どもなりの仕方で……考えている。そのことを踏まえれば、おのずと、わたしたちが子どもたちに向かう姿勢も変わってくる」(一九七─一九八頁)と結ぶ。
本書は二〇〇頁ほどの小著であるが、教員とこの講座に参加した信徒の方々の知恵と思いが詰まっている。信徒の方々はもちろん、宣教牧会の第一線で奮闘しておられる教役者の皆さんにも、是非お読みになることをお勧めする。
(よしだ・まさと=日本聖公会東北教区主教)
『本のひろば』(2018年12月号)より
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