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内容詳細

発達障害はなぜ起こるの? いつからわかるの?

障害のある人は、どんなことに困っているの?

――さまざまな情報があふれ、振り回されていませんか?

発達障害のある人も、ともに安心・安全に暮らせるようになるために、知っておきたい〈発達障害のただしい理解と生活の工夫、適切な支援〉。

家庭・保育園・幼稚園・学校・職場での〈24時間切れ目のない支援〉をめざして、発達障害の起こる原因と症状、具体的なケアの仕方について、21の事例とともに、現役医師がやさしく紹介します!

 

*もくじ*

第1章 発達障害を理解する

第2章 発達障害と周辺

第3章 乳幼児期に発達障害はわかる?

第4章 年代別支援実例集

第5章 発達障害と学校

第6章 高校・大学、そして就職へ

第7章 切れ目のない支援のために

 

*著者紹介*

古荘純一(ふるしょう・じゅんいち)

小児科医、小児精神科医、医学博士。青山学院大学教育人間科学部教授。1984年昭和大学医学部卒業。昭和大学医学部小児科学教室講師、青山学院大学文学部教育学科助教授を経て、現在にいたる。臨床現場では神経発達に問題のある子ども、不適応を抱えた子どもの診察を行いつつ、大学ではこれから教育現場へ出る学生への指導を行っている。

著書 『不安に潰される子どもたち――何が追いつめるのか』(祥伝社新書、2006年)、『日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか――児童精神科医の現場報告』 (光文社新書、2009年) 、『神経発達症(発達障害)と思春期・青年期――「受容と共感」から「傾聴と共有」へ』(明石書店、2014年)、『医療・心理・教育・保育にかかわる人たちのための 子どもの精神保健テキスト』(診断と治療社、2015年)、『発達障害とはなにか――誤解をとく』(朝日選書、2016年)ほか、編集、監訳、共著多数。

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書評

その人らしく生きる力を大切にするために

大澤宣

 以前、テレビのドラマでこういう言葉を聞いた。「できないことを探してくよくよするより、できることを探してワクワクするほうがいいじゃないか」。

 その頃、ある子どもと出会い、その思いを強くさせられていた。それまで、私はこの子どもと言葉を交わせないでいた。これくらいの歳になったら、こういうことができるはずではないか、こういうことができて当然だ。そう考えると、この子どもはできないことばかりだった。特に、他の子どもたちが庭にいると、ひとりで部屋にいるし、他の人たちが部屋に入ってくると、ひとりで庭に飛び出してしまう。

 そのようなある時、この子どもが庭にいて、プランターを見ながら、突然、こう言った。「まあ、きれいなお花畑」。私はこの子の言葉を聞けたことがうれしかった。それからも、この子どもは依然として、できないことは多かった。言葉を交わすことも難しかったが、できないことを探してくよくよするより、できることを探してワクワクしようと思ったのだった。

 この子どもと、今は交流はないが、どのように生きているのかと思わされる。ワクワクしながら、いきいきと生きていることを願っているが、もしかすると生きにくさを感じながら毎日を送っているのかもしれない。

 古荘純一さんの言葉から、子どもたちは誰もが未熟な存在で、どの子もみんな不注意で多動であるということを示された。脳のアウトプットの結果として、不注意、多動な行動をとってしまう子どもを、いたずらに叱責することで、自信をなくさせてはいけないということを教えられた。

 また、「発達障害の子どもは、身体の不自由さはなく、『発想や行動の自由度の高い子ども』と言うことができる」(九五頁)という言葉にも思いを新たにされた。だからこそ、生きる土台を作る幼児期には、多数の人に合わせるための指導ではなく、子どもがその人らしく生きる力を大切にしなければならないのだろう。

 新聞で読んだのだが、自分は発達障害だとは気づいていなかったけれども、子どものことを相談していく中で、自分自身が発達障害であることを指摘されたという人がいた。その人は、これまでの生活で、自覚はなかったが、集団行動が苦手だったりした。

 すべての「しょうがい」が、それを「障害」と感じさせないような世の中に変わっていくことができればすばらしいのだが、現実はなかなかそういかない。

 発達障害の「診断」は「レッテル貼り」ではなく、眼の前にいる「この人」の声を聴いて、その人が「必要としている支援を考える」上で必要なものなのだろう。

 本書では、発達障害の判断の難しさと共に、自閉スペクトラム症、注意欠陥多動性障害、学習障害、発達性協調運動障害などの説明がなされる。そして、特に興味深かったのは、各年代別の支援の実例が語られていることだった。

 幼児の例だが、自閉スペクトラム症の場合は睡眠障害のあることが多く、夜中に目覚めて興奮するなど、家族が疲弊することが多いそうだ。そのようなとき、診断を受けて、適切な薬を用いることも有効だといわれる。そのようにして、生活習慣を整えることで、家族も安心して対応できるようになる。

 年齢がすすむにつれて、進学、就職など、それぞれ新しい課題に出会っていくことになるので、切れ目のない支援を受けられるようにすることが大切なのだろう。

 昨今、「教育」の名のもとに行われる子どもたちへの虐待のニュースが溢れている。子どもに有害なことをする虐待。子どもに必要なものを提供しないネグレクト。これらは、発達障害の子どもに対してだけではなく、すべての子どもに対して、あってはならないことなのだと思う。

(おおざわ・ひろむ=日本基督教団弓町本郷教会牧師)

『本のひろば』(2018年10月号)より