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内容詳細
「教会に若者がいない」と嘆いていませんか?
どうすれば若者が教会に集まるのでしょうか?
どのような説教を語れば若者に届くのでしょうか?
信仰継承に秘訣はあるのでしょうか?
現在、大学生のための伝道団体・キリスト者学生会(KGK)の副総主事として、教団教派を超えた全国の諸教会で奉仕をする著者が、教会を活性化させるための提言を具体的・実践的に語った講演録。
大好評であった前著『おかんとボクの信仰継承』(いのちのことば社)に続き、本書もユーモア満載、いつでも・誰にでも実践できるヒントがここにあります!
本書は、2014年11月17─18日に日本基督教団中部教区教師会で語った講演に加筆修正を施したものです。牧師と信徒が共に若者伝道について考える最良の手引きです。
「聖霊なる神さまは、教会が終末に至る完成を目指すために、自らと同じく未完成で途上にある若者と共に生きることを通して、終末に生きる健全な教会の形成へと私たちを導いておられます。若者のそばに立って、その失敗を共にしていく若者伝道というのは、教会もまた「未完成」で「途上にある」という終末的な教会理解にわれわれを引き戻してくれる、大切な教会の営みなのです。」(本文より)
【目次】
講演1 若者と生きる教会──失敗につきあう大人たち
はじめに
1 「若者に届く」とは?──ポストモダン社会の中で
2 聖書における「若者」──「未完成性」と「途上性」
3 若者の変わりゆく面と変わらない面
4 若者と教会──アンケートの分析から
5 教会が取り組むべき課題
6 失敗につきあう大人たち──聖霊論的パースペクティブから
おわりに
講演2 若者に伝える教会──教会教育と信仰継承
はじめに
1 子どもと共にする礼拝
2 小学校高学年の課題
3 中学生・高校生の課題
4 大学生・青年の課題
5 青年担当の働き人を立てる
おわりに
あとがき
資料 若者の教会に対する意識調査
【著者略歴】
大嶋重徳(おおしま・しげのり)
1974年、京都府生まれ。京都教育大学、神戸改革派神学校で学ぶ。現在はキリスト者学生会(KGK)副総主事、鳩ヶ谷福音自由教会協力伝道師。
著書 『おかんとボクの信仰継承』(いのちのことば社、2013年)、特定秘密保護法に反対する牧師の会編『なぜ「秘密法」に反対か』(共著、新教出版社、2014年)。
書評
教会は若者とどのように向き合えばよいのか?
森島 豊
本書の表紙に著者の素敵な写真が載っている。著者は、評者が学生時代に出会った時とまったく変わらない。年を感じさせない。言葉を変えると、学生時代からおじさんだった(笑)。著者には、こういう冗談を言える親しみが昔からあった。その関係を支える背景には「若者のそばにいて、彼らを励ます存在」(三八頁)であり続けようとした著者の姿勢がある。その理由は次の言葉にある。若者たちが「神さまの前に踏みとどまることを支えたい」(四三頁)。
本書は、KGK(キリスト者学生会)の主事として、学生伝道の最前線に身を置く著者の現場報告とその取り組みである。課題は「信仰を若い世代にどのように伝えていくのか、それも教会としてどのように継承していくのか」(八頁)である。しかもその姿勢が聖書に基づき、教会の教理を重んじているので、安心して読むことが出来る。
著者に一貫していることは、「若者に届く言葉を求めて」(三一頁)いることである。様々な取り組みはすべてこの一点と結びついている。そこが本書の魅力である。そこで心がけていることが「彼らの言葉を聞く」(三三頁)ことである。現場に身を置いているので、若者をとらえる言葉にはリアリティーがあり、洞察力が鋭く、教えられるところが多い。たとえば、現代の若者の特徴として「フィーリング(感覚)」(一〇頁)が挙げられている。判断の基準が正しさではなく、フィーリングに合うかどうか、「心に訴えるかどうかに敏感に反応」(一九頁)しているのである。また、「聖書を読まない」(二二頁)傾向を指摘している。画面に映し出される画像で聖書を見ているので、自分で聖書を読む習慣がなく、「『聖書体験』が失われている」(二二頁)ことを危惧する。したがって、教会が取り組むべき課題は、「聖書をそのまま若者に届く言葉で語る」(二三頁)ことなのである。
本書を読んでいて気づかされることの一つは、若者に届けようとする著者の言葉がストレートなことである。本当は聞きたいけれども、尋ねられない若者特有の問題から逃避せずに向き合っている。その一つが性的な話である。教会は「自分の性欲あるいは性的な衝動について、これをどう取り扱えばよいのか語ってくれない」(二一頁)。しかし著者は、若者特有かもしれない恋愛や性的な悩みを馬鹿にしないのである。驚くかもしれないが、小学生にも「必ず性のことを話すことにして」(一八頁)いる。この問題に一緒に悩み、聖書の信仰を通して「若いときの葛藤を、信仰を持って乗り越えて生きていくことができるように」(四三頁)関わり続けているのである。いろいろな意見があると思うが、著者にならば相談できる若者は多いだろう。若者の悩みを軽んじないからである。
また、崩壊した家庭で育った若者たちの不安にも寄り添っている。辛い家庭環境に育った若者の悩みを代弁し、「彼らを励ます存在」(三八頁)の必要性を説いている。そこに教会の姿を見ている。著者が出会った若者との話は心に響く(四一―四二頁)。青年伝道の秘訣は、「『何を行うか』という方法論よりも、『だれと出会うか』ということが大切なこと」(三九頁)という言葉には説得力がある。
他にも、取り組みの中から生まれた様々なアイデアの紹介、学生へのアンケート結果も参考になる。教会学校の取り組みを「やめないでいただきたい」(二五頁)という理由については是非読んでいただきたい。
本書を読んでいると、われわれの存在が問われる。若者への伝道は忍耐を強いられるが、次の言葉が心に響く。「どれだけ時間をかけたからといって、その若者が真っすぐに主を仰ぎ見るかというと、そんなことはありません。裏切られるような言葉と共に去っていくケースも多々あります。……けれども、それでいいのです。彼らが彼らの言葉で神さまとの出会いを表現していくことを、私たちは喜ぶのです」(五八頁)。
(もりしま・ゆたか=青山学院大学准教授・大学宗教主任)
『本のひろば』(2016年1月号)より