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内容詳細

日本の改革長老教会の信仰的なアイデンティティの源流がここに!

改革長老教会の教理的基礎の集大成。古代の基本信条と、宗教改革期と近現代、そして日本で生み出された主要な信仰告白を網羅した画期的な文書集。既に出版され定評がある最良の翻訳を収録しました。

【目 次】

第一部 基本信条

ニカイア信条(381年)(関川泰寛訳、解説:関川泰寛)
カルケドン信条*(451年)(関川泰寛訳、解説:関川泰寛)
アタナシウス信条*(5─6世紀頃)(関川泰寛訳、解説:関川泰寛)
使徒信条(8世紀頃)(『讃美歌』所収訳、解説:関川泰寛)

第二部 改革教会の信仰告白

ジュネーヴ教会信仰問答(1542年)(渡辺信夫訳、解説:渡辺信夫)
スコットランド信仰告白*(1560年)(原田浩司訳、解説:原田浩司)
ベルギー信仰告白(1561年)(大崎節郎訳、解説:大崎節郎)
ハイデルベルク信仰問答(1563年)(春名純人訳、解説:春名純人)
第二スイス信仰告白(1566年)(渡辺信夫訳、解説:渡辺信夫)
ドルトレヒト信仰規準(1619年)(牧田吉和訳、解説:牧田吉和)
ウェストミンスター信仰告白(1647年)(村川 満・袴田康裕訳、解説:袴田康裕)
ウェストミンスター大教理問答(1648年)(松谷好明訳、解説:袴田康裕)
ウェストミンスター小教理問答(1648年)(松谷好明訳、解説:袴田康裕)
バルメン宣言(1934年)(加藤常昭訳、解説:加藤常昭)

第三部 日本の教会の信仰告白

日本基督教會信仰の告白(1890年)(解説:五十嵐喜和)
日本基督改革派教会信仰規準ノ前文(1946年)(解説:袴田康裕)
日本キリスト教会信仰の告白(1953年制定、1985年一部改正)(解説:三好 明)
日本基督教団信仰告白(1954年)(解説:藤掛順一)

(*は新訳)

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書評

日本の改革・長老教会の一つの到達点がここに!

吉田 隆

 古今(一六~二〇世紀)東西(欧米~アジア・アフリカ)の改革・長老教会が生み出した信仰告白を一〇九も集めた記念碑的な『改革派教会信仰告白集』(一麦出版社、二〇一一~二〇一三年)や、日本初の改革・長老主義諸信条に基づく教会として設立された日本基督一致教会の「信仰ノ箇条」(ドルトレヒト信仰規準・ウェストミンスター信仰告白・同小教理問答・ハイデルベルク信仰問答)の画期的覆刻版(教文館、二〇一三年)出版の興奮冷めやらぬ間に、この度の出版である。二一世紀は〝信仰告白の世紀〟かと思わず力が入る。
 本書は、基本信条・改革教会の信仰告白・日本の教会の信仰告白の三部・一八の信仰告白からなる、日本の改革・長老主義伝統に生きる編者と訳者たちによって成し遂げられた、言わば決定版『改革教会信仰告白集』である。収録されている信仰告白の訳者・解説者たちも、おそらく現時点で望める最高のキャストであり、その意味でも本書は我が国における改革・長老教会の一つの到達点を示す書物であるとも言えよう。
 他方で、冒頭で述べた二つの信仰告白集と異なる点は、ニカイア・カルケドン・アタナシウス・使徒信条という四つの基本信条を含めている点である。改革派教会は聖書の絶対的権威を主張して教会会議を相対化したためにカテキズムで用いる使徒信条以外はあまり馴染みがないかもしれないが、とりわけ三位一体とキリストの二性一人格の教理において基本信条を継承していることは内容において明らかである(例えば『スコットランド』一、六)。何より『ベルギー信仰告白』が明確に使徒・ニカイア・アタナシウスの三信条を受け入れることを表明している(第九条)。これにカルケドン信条を加えて四つにしたのは『日本基督改革派教会信仰規準ノ前文』にならったのかもしれないが、元はと言えば、同『前文』の起草者たちが精読したシャフの『信条集』に基づいていると思われる。
 いずれにせよ、こうして基本信条と改革・長老教会の主要信仰告白を合わせた本書を眺めていると、さながら改革派教会の〝一致信条書〟のようにも見えるし、あるいはまた『バルメン宣言』や自国の信仰告白をも加えて一冊にしたアメリカ合衆国長老教会(PCUSA)の信条文書集(Book of Confessions)の日本版のようにも見えてくる。ちなみに後者に収められている文書は、ニカイア・使徒・スコットランド・ハイデルベルク・第二スイス・ウェストミンスター告白・小教理・大教理・バルメン・一九六七年信仰告白・合衆国長老教会信仰の短い声明である(最後の二つは、一麦出版社 『信仰告白集』で読める)。
 改革・長老教会の神学的伝統は決してカルヴァン一人に帰されるものでなく多彩な神学者たちによる総合的伝統であることが、今日常識となりつつある。それは決して真理の相対化ではなく、むしろ絶対的規範である聖書そのものが持つ豊かさに対する真摯な取り組みの結果である。改革・長老教会の信仰告白が決して閉じられていない(その意味では〝決定版〟になりえない!)のは、そのためである。今や広く用いられるようになった〝改革され続ける教会〟という標語もまた、元はと言えば一七世紀オランダの改革派正統主義において用いられ始めた言葉であり、正統主義路線の変更ではなく、より聖書的に正しい信仰に生きるために我々自身が変革される必要を訴えた言葉なのであった。改革派教会は、一にも二にも聖書に基づく信仰によって立つ教会なのである。
 宗教改革五〇〇周年に備えて、ルター派・改革派を始めとする世界のプロテスタント諸教会が動き出している。本書序文に「落ち葉が積み重なるように」形成された諸信仰告白(三頁)とあるように、神の言葉に生きまたそれを求め続けた人々の、信仰の言葉の堆積が「信仰告白集」に他ならない。このような真に豊かな土壌から、二一世紀を切り開く新しい若芽が次々と芽生えて来るように、祈りを込めて本書を推薦したい。

(よしだ・たかし=神戸改革派神学校校長)

『本のひろば』(2015年3月号)より