税込価格:1320円
購入サイトへ 問い合わせる
※在庫状況についてのご注意。

内容詳細

神の栄光を現し、神を喜ぶ信仰をあなたに!

17世紀の英国で作成されて以降、その美しく厳密な教理の言葉と深い敬虔な生き方とが一体化されたピューリタンの霊性の結実として、時代・地域を越えて多くの人に愛されてきた「ウェストミンスター大教理問答」。混迷する現代社会の中で、神を中心とした聖書的・福音的霊性を養う最良の手引き。 【推薦のことば】 袴田康裕(神戸改革派神学校教授) 「ウェストミンスター信条は、改革派正統主義の代表的信条として、しばしば誤解・偏見に基づく批判がなされますが、この大教理問答が丁寧に読まれれば、正統主義についての誤解・偏見は解消するでしょう。ここには、厳密な教理と深い敬虔が一体化したピューリタンの深い霊性が結実しています。このような霊性こそが、危機感を深めている現代の日本の教会に求められているのではないでしょうか。その意味でも、本書の出版の意義は大きいと言えます。」

[袴田康裕訳]

在庫表示は概要となります。詳しくは「問い合わせる」ボタンから直接出版部にお問い合わせください。

書評

神を愛し、具体的に従うための指針として最良の手引きの一つ

坂井純人

 本書は、改革派信仰、ピューリタン信仰の最高の精華の一つ、一七世紀の英国で作成されたウェストミンスター大教理問答の最新の日本語訳である。現代に至るまで、世界で広く用いられ続けているウェストミンスター信仰規準であるが、信徒教育には、小教理問答が一番、取り組みやすいと思われる。しかし、実は、小教理問答は、大教理問答の縮小版として作成されている。この点から鑑みると、同信仰規準の〈心〉をより深く正確に学ぶためには、実は、大教理問答の学びが不可欠なのである。その上で、有機的に信仰告白と大教理問答、小教理問答を関連させて学ぶ方法が望ましい。
 この学びを実践する上では、親しみやすい翻訳が不可欠である。今回の宮﨑氏による翻訳は、この点で最適である。これは、宮﨑氏の優れた語学力にもよるが、自ら改革派信徒、牧師として、ご自身の信仰と改革派神学の理解とをこの大教理によって養われ続けて来たからである。この明解さは、大教理問答が、宮﨑氏の血肉となった証である。そして、教会で信徒の方々と共に学び、福音的慰めをも共有された。まさに、信徒と共なる作品であるからこそ生まれた血の通った翻訳と言える。従来の優れた翻訳に加えて、この翻訳が世に出る大きな意義の一つは、とても親しみやすい語感にあるのではないだろうか。特に、第一問の答「人間の第一の、最高の目的は、神の栄光を現し、神を永遠に、この上なく喜ぶことです」(傍線筆者)の訳は、素晴らしい。原文のfully to enjoyを「この上なく喜ぶこと」と訳されると「この上ない喜び」が感覚的にも鮮やかにされる思いである。
 さらに、大教理問答の真髄の一つは、現代にも通じる十戒の深い理解にある。例えば、訳者は、大教理の第六戒の洞察の鋭さは、一連の原発関連事件に潜む問題にすら示唆を与えていると述べる(「訳者あとがき」)。十戒の意義は、時代を超えて、神の御前に生きるあらゆる人間生活に応用できる。時代が違っても鋭い罪の認識は、様々な個人倫理、社会問題の深層に迫る。さらに、福音の光における十戒の読み方の原則も教えられる。科学技術が進展し、倫理理解が多様化しても人が持つ問題と解決への道筋は、御言葉の中にある。本書は、キリストにある恵みの契約の内に教理と生活を一体化して捉えたピューリタン的信仰を学ぶ最良のテキストの一つである。装丁は明るく、サイズも持ち運びしやすいので、多くの信徒の方の良きガイドブックになるだろう。
 学術的に重要な本文の問題であるが、底本は、スコットランド自由長老教会出版委員会による所謂、FP版(一九六七年、一九九四年)を中心にしている。同時に、最新の本文批評研究を行ったバウアー(John R. Bower, The Larger Catechism: A Critical Text and Introduction, Grand Rapids: Reformation Heritage Books, 2010)のクリティカル・テキストも必要に応じて参照されている点に本文への厳密な姿勢が窺える。
 宮﨑氏は、若い日に、この大教理問答に出会った。そして、「こんなにすばらしい宗教があるのならば世界の果てにでも行って求道したいものだ、と思った」(「訳者あとがき」)そうである。キリストが下さる救いへの「この上ない喜び」を湧き立てる力が、このウェストミンスター大教理問答を通して一人の信仰者に与えられたのである。これからの日本の教会でも、もっと多くの方々とこの喜びを共有したい。筆者もそのような思いにさせられた。この情熱を伝えて下さった訳者の労に心から、感謝を捧げたい。

(さかい・すみと=北米改革長老教会日本中会東須磨教会牧師、神戸改革派神学校講師、神戸神学館教師)

『本のひろば』(2014年10月号)より