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内容詳細

誕生にまつわる意外なドラマ
誰もが知っている賛美歌「主われを愛す」は、いつどのように作られたのか。表題作ほか、作詞者・作曲者の知られざる生涯と信仰をたどり、誕生秘話や原詩歌に隠された「本当のメッセージ」に迫る、とっておきの賛美歌エッセイ集。

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書評

賛美歌をとおして主イエスの愛にふれる

吉岡康子

 「花は咲く」と言う「東日本大震災復興支援ソング」が色々なところで歌われています。今年二月に岩手県・宮古市で行われた私の勤務する短大の第四回ボランティア活動においても、学生たちがこの歌を練習し、仮設住宅の集会所、瓦礫処理作業所、また宮古市役所のロビーなどで宮古の方々と一緒に歌いました。作詞者・作曲者共に宮城県出身とのことで、亡くなられた人々と生きている人々の思いや願いが重なり合うような歌詞と美しいメロディを歌うと、今まで元気に明るく話しておられた方々が途中で涙を流され、私たちも涙し、そして最後には笑顔で大合唱になるという経験を何度もしました。歌が慰め、励ましを与え、さらに心を結びつける力があるとあらためて思わされたのでした。

 これが賛美歌となれば、さらにその力は強力なものとなります。賛美歌に隠された「宝」――その誕生をめぐる様々なストーリーを研究され、すでに五冊の「賛美歌ものがたり」を刊行された筆者の最新作が、可憐な鈴蘭の表紙写真も美しい本著です。二〇〇四年から続けられているクリスチャン音楽集団ユーオーディア・アカデミーでの「賛美歌講座」でのお話がまとめられたものです。

 筆者は情熱をこめて私たちに呼びかけます。

 「この『「主われを愛す」ものがたり』を通して私が訴えたい事は、「ほんとうに、ほんとうに主イエスは私を愛してくださる」と信じて、喜びに溢れる人が日本に増えることです。本書で取り上げたどの賛美歌も、主イエスが驚くほどに私たちを愛しておられ、それゆえ苦難も死も恐れることはない、と述べています。現在の日本は何よりも主イエスの愛を必要としています。主イエスの愛こそ、日本を動かす霊的エネルギーです」(あとがきより)。

 昨年亡くなったホイットニー・ヒューストンの主演映画「ボディガード」は大ヒットし、映画のサウンドトラックはグラミー賞最優秀アルバム賞を受賞しましたが、大ヒット曲「オールウェイズ・ラヴ・ユー」よりも印象的なのは、劇中で、葛藤しあう姉妹がひと時心を通わせてしみじみ歌う「ジーザス・ラブズ・ミー」です。時代も国も超えて広く人々に愛されているこの賛美歌の誕生ものがたりが本書の冒頭で語られます。作詞者アンナ・ウォーナーは一九世紀はじめにアメリカの裕福な家庭に生まれましたが、二歳にして母を亡くし、父親も恐慌により資産を失い、大変な困窮生活を送ることになり、「生活のため」姉スーザンと同じく小説を書きはじめます。また姉妹の自宅で聖書を学ぶ会を開き、そこには近くにあったウエスト・ポイント米国陸軍士官学校の士官候補生がたくさん集まりました。この姉妹の共著のなかでアンナは姉の提案によって、一つの賛美歌を書きました。「それは日曜学校の教師であったジョン・リンデンが、重い病気に苦しんでいる少年ジョニー・フォックスを両腕で抱きかかえて静かに歌う歌」で、これが「主われを愛す」であったと言われています……がしかし実は……。さらには、「熊本バンド」生みの親、L・L・ジェーンズは一八七六年(明治九年)一月に熊本城外の花岡山で「奉教趣意書」に、後の日本のキリスト教会のリーダーとなる青年達と署名をし、高らかに「主われを愛す」を賛美したと言われていますが、ジェーンズはウエスト・ポイント陸軍士官学校卒業生で、何と作詞者アンナと実は……という興味深いエピソードが満載です。

 読めば賛美する思いも祈りも必ず深くなる一冊です。

(よしおか・やすこ=青山学院女子短期大学宗教主任)

『本のひろば』(2013年7月号)より