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内容詳細
好評の「聖句断想」シリーズから優れた黙想366篇を精選、一日一章として再編集。日ごとに新しくみ言葉に出会い、生きるための力を与えられる珠玉の言葉。ハンディで読みやすいA6判(文庫)。プレゼントにも最適です!
書評
今日を生き抜く新しい力を!
小島誠志著
朝の道しるべ
聖句断想366日
木下宣世
この度、尊敬する小島誠志牧師が『朝の道しるべ』という文庫版の著書を出版された。キリスト教の出版界で文庫版の大きさの本を出版することはめずらしいのではないか。家の中だけでなく外出の際バッグやカバンに入れて、車中やちょっとした機会に取り出して読むには手頃な大きさである。
それはこの本の中味にもかなっている。何故ならこの本は表題に「聖句断想366日」とある通り一月一日から十二月三十一日まで一日一頁の分量でその日の聖句とそれに基づく著者の短文を記したものだからである。
長い時間をかけて読む必要はない。忙しい朝でもパラパラとその日の頁を開き、サッと聖句と断想に目を通し、短く黙遖アする。いたって短時間ではあるが、それでその日一日の指針と新しい力が与えられる。そのような用いられ方もこの本に対する著者の願いではなかろうか。
「あとがき」を読むと、この本は著者のこれまで出版された「聖句断想」シリーズ五巻の中から三六六日分が選ばれ、編集されたものだそうである。聖句は旧約聖書は詩編からのものが圧倒的に多いが、新約聖書は四福音書はじめ、書簡から黙示録までほぼ全体にわたっている。
クリスマスやイースターなど主な教会暦にふさわしい編集もなされているが、主として同じ書物が連続して取り上げられる場合が多い。例えば五月はロマ書、六月はそれ以降の諸書簡、七月八月は詩編が続くというようにである。
この本の価値はこれら選ばれた聖句に付せられた著者の断想にあることは言うまでもない。その文章は総じて短い。時には聖句の長さと殆ど変わらないものさえある。
だから、読もうと思えばアッという間に読んでしまうことができる。しかし、圧縮された文章をもう一度繰り返して読む毎に、味わいが深まる。そこから一日の糧を与えられ、御言葉に生かされて一日を歩むよう整えられるのである。
著者の文章は深い内容の事柄を的確な印象深い言葉で表現する。物事の内面を文学性の高い豊かな語彙と巧みな語法でわかり易く描き出す。それによって読者は御言葉による養いを受けるであろう。
ここで取り上げられている主題は創造、神の国の到来、十字架、教会及び教会生活等々多岐にわたる。その中で著者が繰り返し語っているのはキリスト教の信仰とは何か、あるいは何でないか、また信仰をもって生きるとはどういうことか、ということである。そして筆者もこの事柄が最も印象に残った。
たとえば六月二十一日「信仰とは、神の揺るがない視野の中に自分があることを知っていることであります。だから、精一杯生き、労し、眠るときには眠ります。」
十二月一日「信仰は自分の中に持つ何かではありません。自分がその中に立つことであります。」
十二月七日「霊の乳を慕い求めることによって生きるのです。どんなに深い思索をしても、経験を積み重ねても、そんなことで信仰は命を得ることはできません。」
この他にも沢山あるが、これらの言葉から著者の信仰は十字架の福音に固く立ち、恵みのみによって生きる生き方であることがわかる。
立派でなくてもよい、力が無くてもよい、破れ、躓き、倒れてもよい。ただひたすら神の御手に全身を委ねて、ありのままに歩めばよい、と語られるのである。
これはおそらく著者の長い信仰者及び牧師としての歩みの中で戦い、苦しみ、悩んでこられた信仰の戦いの中から生み出されたものであろう。貧しい人や小さな存在、弱者に対する温かいまなざしも同様に著者自身の信仰から生まれたものであろう。
いつも手許において、繰り返し味わいたい本である。
(きした・のぶよ=日本基督教団西千葉教会牧師)
(A6判・四〇〇頁・定価一五七五円〔税込〕・教文館)
『本のひろば』(2012年4月号)より