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内容詳細
教会は社会問題とどう向き合うのか?
18世紀中葉のイギリスに始まり、19世紀にヨーロッパ大陸に波及した産業革命の時代に、近代世界における宗教、政治、社会の諸問題と誠実に向き合い、教会の果たすべき役割を提起したマインツの司教ヴィルヘルム・エマヌエル・フォン・ケテラー。「労働者の司教」と呼ばれ、その後のカトリック教会の社会教説に大きな影響を及ぼした、彼の思想と行動を解き明かす。
「19世紀ドイツに「労働者の司教」の愛称を持つ人物がいた。マインツ司教ヴィルヘルム・エマヌエル・フォン・ケテラー(1811─1877年)である。この人物が、19世紀ドイツの産業化に随伴した出来事「社会問題」にどう対処し、どのような社会思想を築き上げたのか、その思想と行動を解き明かすことが本書の課題である」(本文より)
【目次】
目 次
序章 ケテラーと現代──研究の意味
はじめに
第一節 カトリック社会運動について
第二節 カトリック政治運動について
第三節 カトリック社会理念について
一 補完性原理
二 連帯の理念
三 共通善
結びの言葉
第一章 ケテラー略伝
はじめに
第一節 生い立ち、ケルン紛争、離職
第二節 聖職への道
第三節 農民司祭として
第四節 一八四八年の革命
第五節 ベルリンからマインツへ
第六節 マインツ司教として
第七節 死
結びの言葉
第二章 ケテラーの基本思想──補完性原理を中心に
はじめに
第一節 補完性原理とは何か
第二節 ゲマインデと国家、どちらが基盤か
第三節 ゲマインデと国家、どちらが安定しているか
第四節 国家権力の法的基盤は国家それ自体か、それとも国民か
第五節 国民学校と宗教教育について
結びの言葉──自由と宗教
第三章 社会問題の第一段階(一八四八年)──慈善(カリタス)
はじめに
第一節 慈善の実践と言葉
第二節 キリスト教所有権思想
第三節 共用の解釈をめぐって──隣人愛、国家強制、社会規範
第四節 所有権と自由
第五節 プルードンの警句「財産は窃盗である」
第六節 ドイツ産業化
結びの言葉──ケテラーの対処は妥当であったか
第四章 社会問題の第二段階(一八六四年)──社会改革
はじめに
第一節 一八六三年という年
第二節 『労働者問題とキリスト教』(一八六四年)
第三節 労働者の窮乏化とその原因
第四節 自由主義者シュルツェ=デーリチュの提案
第五節 社会主義者ラサールの提案
第六節 キリスト教的で実践的な対策
第七節 ケテラー批判
第五章 社会問題の第三段階(一八六九年)──国家の社会政策
はじめに
第一節 国家干渉の容認
第二節 キリスト教労働者運動のマグナカルタ(一八六九年七月)
第三節 ドイツ司教会議への報告(一八六九年九月)
第四節 生産共同組合から労働組合へ
第五節 労働者問題への国家干渉(一八七三年)
第六章 自由主義との対決
はじめに
第一節 自由主義の多義性
第二節 一八四八年の自由主義とケテラー
第三節 ドイツ自由主義の変貌
第四節 対立の顕在化
第五節 初期自由主義と後期自由主義
結びの言葉
第七章 社会主義との対決
はじめに
第一節 執筆の動機
第二節 労働者運動の正当な要求
第三節 労働者運動の不当な要求
第四節 誤解と偏見
第五節 なぜ、キリスト教は社会主義と両立できないのか
結びの言葉
あとがき
注
参照文献
人名索引