ベスト👍 ノンフィクション
『うんこ虫を追え』
舘野鴻 文・絵
福音館書店
2024年5月10日 発行
1430円(税込)
40ページ
対象:小学校中学年から

謎につつまれたオオセンチコガネの地中での生態をときあかす!

『つちはんみょう』(偕成社)などの作品で知られる舘野さんが挑んだのは、美しい姿をしたオオセンチコガネの地中での生態です。この虫はうんこが大好物。
成虫は動物のうんこを食べて、うんこの塊を地中につくって幼虫を育てることが知られていました。が、地中にいる幼虫の生態は謎だらけ!

その謎に果敢に挑んだ舘野さんの取材と観察の記録が本書です。なんと、4年もの歳月をかけたそう。虫を飼うことから始まり、予測と失敗を繰り返し、それを淡々と記しています。そのさまはときに残酷で、ときにユーモラス。失敗を繰り返しながらも虫と向き合い、己と向き合う。その姿の真っすぐさは凄みも感じます。1冊の本を描き上げるまでの過程は、研究者と言ってもいいくらい。
「ハードカバー版によせて」と巻末にある文章もとてもいい。「やればやるほどわからない。それが自然界です。わからないからおもしろい」という舘野さんですが、この域に一人でも読者の子どもが達してくれたら、と願わずにはおれません。ググればわかる、というものではないことを感じられる。
そして、子どもはともかく大人の読者は、このページも読み飛ばさずにしっかり目を通してほしいものです。
これまでの作品からも伝わってきた舘野さんの「熱量」をめいっぱい受け取ってください! さらにパワーアップしているかも~(笑)。

2022年6月1日発行の「たくさんのふしぎ」として刊行されたもののハードカバー化。7月からの国立科学博物館の「特別展 昆虫MANIAC」にて本書の内容が展示されているそうですから(すごい~!)、夏休みに行ってみてはいかがでしょうか。 (す)

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