クリーンヒット ⚾ ノンフィクション
『難民・移民のわたしたち これからの「共生」ガイド』
雨宮処凛 著
河出書房新社 刊
2024年8月 発行
1562円(税込)
248ページ
対象:中学生以上
遠い国のことじゃない、隣の「あの人」のこと
著者は長いこと生活困窮者の支援を行ってきた作家・アクティビストです。活動を通して困難な立場にある大勢の人たちに会い、社会に存在するけれど私たちが知らずにいた問題について数多くの本を執筆してきました。その彼女が今回14歳に向けて記したのは、私たちの身近で暮らす外国籍の人たちのことです。
銀座の街には外国からの観光客がとても多いのですが、このように旅行で一時的に訪れるだけではなく、現在は多くの外国人が日本で生活をしています。その数341万人! なんと100人に3人が外国人なのです。日本に来た理由は様々ですが、この中には社会で生きるための権利が制約されているため、非常な困難と不安を抱えて生活せざるを得ない人たちがいます。日本人として日本で生まれた私が当たり前に持っている自由と権利が保障されず、生きることがこれほどまでに厳しい人が自分のすぐ隣にいるということに、まずは驚かされることでしょう。雨宮さんが話を聞いたミョーさん(ミャンマー出身)、アリーヤさん(アフリカ出身)、ペニャさん(チリ出身)は自分の国にいては命の危険があるため日本に逃げてきましたが、日本では難民認定されずに長い年月“宙ぶらりん”な状態に置かれています。働くことも許されず、しかし福祉の援助(生活保護など)も受けられない彼らは、支援者に頼って生きるしかないーーそんな風に尊厳を傷つけられながら日々を送らなければならないと想像するだけで胸が苦しくなります。この本には他にも、日本で生まれ育ち、日本の教育を受けてきた日本語しか知らない外国籍の子どもたちの声が紹介されていますが、理不尽な制度に阻まれて将来の夢を持つことさえできないという現実には怒りを禁じえません。
なぜ日本社会はこれほどまでに外国の人たちと共に暮らすことを忌避するのか? その問いが読み終わった後も、心の中で繰り返されています。自分の中にもあるかもしれない無意識の偏見と向き合いながら、同時に「〇〇人」や「難民」などの顔が見えない大きな主語で外国人を捉えるのではなく、私の隣で一緒にこの社会を構成する個人という視点を持って、この問題をこれからも注視したいと思いました。
当事者・支援者などのリアルな声を拾い、日本の政策の実情を記した難民・移民を知るための入門書--大人の方にも手に取っていただきたい本です。(か)
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