ベスト👍 ノンフィクション
『センス・オブ・何だあ? ―感じて育つー』
三宮麻由子 著
福音館書店 刊
2022年3月5日 発刊
定価1,100円(税込)
112ページ
対象:中学生以上

感じること、疑問を持つこと、その先に見えるもの

今、あなたはどこでこのページを開いているでしょう。家にいてちょっと一息ついているところ? それとも仕事場? あるいは移動中の電車やバスの中かもしれませんね。
ちょっとだけ目を閉じて耳を澄ませてください。どんな音が聞こえますか? マスク越しの方もいらっしゃるでしょうが、何か香りを感じますか? 足の裏や手を伸ばして指先に触れるものの感触はどうでしょう。

目をつむってみると、私たちはいかに多くの情報を視覚から得ているかがわかります。4歳の頃に目の手術により視力を失った本書の著者・三宮麻由子さんはそれまでの覚えている限りの「見える」記憶を頭や心にとどめ、色や景色など様々なものの見え方を思い出して生活していると語ります。
目の前に風景がない状態を自ら「シーンレス」と名付けた三宮さんがどのようにして「シーンフル」な心を取り戻したのか、経緯と思いが綴られた本書。そこには、かのレイチェル・カーソンの著作『センス・オブ・ワンダー』(新潮社)をもじった本作のタイトルからも察せられるように、物事を感じる力・疑問を持つことの重要性が深く関わっています。
香りで四季の移ろいを知ったり、調理の音で料理の火の通り具合や完成を聞き分けたり、ピアノの練習を通じて物事に集中する力を身に付けたり。人柄のゆかしさが偲ばれる静謐な文面は、視力に問題があろうとなかろうと、「センス・オブ・何だあ?」を研ぎ澄ませることで豊かな世界が与える生きることそのものの可能性を教えてくれます。

別のエッセイ集『鳥が教えてくれた空』(集英社文庫)では、本書で紹介されている体験に基づく発見の根底に野鳥との触れ合いがあると書かれており、鳥を介してどのように三宮さんの世界が拡張されたのかがより詳しくわかります。こちらも感慨を抱く一冊ですので併せてお読みになることをおすすめします。

◎購入は<こちら>から

 

★ご注文はお電話、Fax、メールにて承ります。
売場直通電話 03-3563-0730
Fax 03-3561-7350
メール narnia@kyobunkwan.co.jp