ベスト👍 ノンフィクション
『エベレスト 命・祈り・挑戦』
サングマ・フランシス 文
リスク・フェン 絵
千葉茂樹 訳
徳間書店 刊
2019年7月31日 発行
本体2,800円+税
72ページ
対象:小学校中学年以上
エベレスト――世界最高峰に魅せられて
誰もが一度は耳にしたことのある山、エベレスト。チベットとネパールにまたがるヒマラヤ山脈には大小110を超える山々が連なり、なかでも世界最高峰とうたわれるエベレストは多くの登山家の憧れです。
8,848mもの標高があるため真夏でも気温は氷点下になり、山行は常に遭難や凍傷、酸欠による体調不良などの危険と隣り合わせ。いわば決死の挑戦です。
それでもこの頂に足をかけようと、世界中から人々が集まるのはなぜでしょう?
本書はそのエベレストの魅力と謎に迫った1冊です。
およそ5,000万年前にプレートのぶつかり合いで火山が噴火し、地表が隆起して誕生したヒマラヤ山脈ですが、実は現在も年間5㎜ずつ標高が高くなっています。
ではその標高はどうやって計測されているのか、不思議ですよね。
さらにこの特異な環境は、固有種と呼ばれる数多くの動植物の生息地帯でもあります。
そこには一体どんな生き物の暮らしがあるのか、現地の人々の生活やシェルパという仕事の内容についても触れつつ、さらには歴代の登山家たちの登頂記録へと、まるで一歩一歩高度を上げるように展開される内容構成は自分自身もクライマーになったかのような高揚感を覚えます。
最後に取りあげられている、近年、いくつもの登山ルートができたことで登山客が増え、環境汚染が広がっているという問題点も心に刻んでほしいと思います。
美しい風景、自然の豊かさを時代を越えて継承できるかどうかは、登山の有無にかかわらず一人ひとりの意識にかかっています。
子どもたちにはぜひ『富士山にのぼる』(アリス館)、『シェルパのポルパ エベレストにのぼる』(岩波書店/ともに6月9日掲載)と併せてご紹介ください。
外出が規制される日々ですが、新しい世界を知ることできっと命の洗濯ができますよ。 (い)
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