ベスト復刊👍 絵本
『よるのびょういん』
谷川俊太郎 作
長野重一 写真
福音館書店 刊
1979年9月1日 月刊「こどものとも」発行／2022年4月5日 復刊
定価990円（税込）
32ページ
対象：幼児から
夜の病院で緊急手術！
朝からおなかが痛いゆたかは、夜になって高熱を出します。お母さんが呼んだ救急車で病院に担ぎ込まれたゆたか。当直の先生に盲腸炎と診断されて、すぐ手術をすることに――。
夜の病院を舞台に、手術台にのぼるゆたかや手術を執刀する医師と看護婦、それを見守る両親の様子をモノクロ写真で追いかけます。痛さに苦悶するゆたかの顔、手術道具を手にする医師たちの真剣なまなざし、心配で泣き出しそうなお母さんの瞳とお父さんの眉間の皺。写真からは得も言われぬ緊迫感があふれ出し、大人も子どもも思わず手に汗を握って見入ってしまいます。
そして、翌朝。目を覚ましたゆたかは、傍らのお母さんにあることをせがみます。何と言ったのでしょうか？
そこにはこの母子にとっても読者にとっても、これまでの緊張を解きほぐす微笑ましいやりとりが描かれています。読者は安堵して本を閉じ、そうした安心感がその後も何度も絵本を開かせます。
物事の “刹那” をダイレクトに伝えるモノクロ写真。心身に迫るこの絵本を子どもの頃に読んだ者の一人として今回の復刊はとても嬉しく、また父の膝の温もりを思い出し胸がきゅっと締め付けられるように感じたのでした。 （い）
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