ベスト👍 フィクション
『ハルコロ(1)(2)』
石坂啓 漫画
本多勝一 原作
萱野茂 監修
岩波書店 刊
2021年6月15日 発行
定価各1430円(税込)
(1)278ページ (2)285ページ
対象:中学生から

彼らは確かにそこに生き、暮らしていた…。

岩波現代文庫、そして漫画です!
何の先入観も持たずに、「ふーん、岩波現代文庫、漫画なんだ~」と
パラパラと読み始めたのですが、一気に別世界に持っていかれました。

主人公の少女ハルコロ(いつも食べるものがあるという意のアイヌの言葉)の
人生と家族の物語を通して、アイヌの人々の日々の生活と文化を描きます。

この物語の良さは、等身大のアイヌの人々の日常の姿が描かれているということ。

アイヌの文化を伝える作品はこれまでもたくさん出ていましたが、「和人」に「侵略」される
前の時代のアイヌをこれほどまでに瑞々しく伝えてくれる作品はなかったと思います。

私の中のアイヌは、「神話」のような独特な世界の中で生きていた”別次元の遠い存在”でしたが
この本を読んで初めて、この遠い距離間がなくなりました。
この時代を生きた人々の息遣いと鼓動を読み終えた後に、はっきりと感じたのです。

そして、アイヌの文化と共に、この物語が繰り返し描いているのは『伝えること』の重みです。
現代を生きる私たちがいつの間にか忘れてしまった、「人として生きるために一番大切なもの」
を親から子、子から孫へと『伝えること』の大きさと重さ。

物語としても実にドラマチックなので、活字の苦手な中高生にもオススメしやすいと思います。
(何せ漫画、でも、石坂啓さん実に描き方がうまいです!)

中高生の図書館の本棚にぜひ置いていただきたい本です。(く)

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