ベスト👍  フィクション
『サンドイッチクラブ』
長江優子 作
岩波書店 刊 
2020年6月 刊
本体1500円+税
238 ページ
対象:小学校高学年以上

毎日は同じことのくりかえしのようで、そうではないはず。 明日のわたしは今日のわたしじゃない。

中学受験を控えた6年生の夏休み、成績不振のため母親のすすめでダブル塾通いをすることになった桃沢珠子は、午後の個人指導塾で羽村ヒカルと出会う。訳も分からずヒカルの「黄金のシャベル奪還作戦」に加わることになった珠子は、公園の砂場で砂の彫刻制作対決を見守ることになった。
塾ではトップの秀才で周囲からは変わり者と見られるヒカル、砂像作りに情熱を燃やし世界的アーティストを目指す葉真(ようま)、受験にもいま一つ気が入らず毎日がモヤモヤしている桃子ーー小学6年生の彼らは真夏の公園の砂場で、それぞれの複雑な胸の内に向き合いながら熱く、まっすぐに砂像作りに打ち込んでいく。

子どもたちを取り巻く日常は大人が考えるほど単純ではありません。
そして、6年生といえば自分の将来を少しずつ考え始める年頃でもあり、未来がバラ色だと思えるほど幼くはないけれど、未来はよいものに変えられると信じる力も持っている、そんな年齢だと思います。
物語の中ではそんな彼らを見守るように、砂像アーティストのシラベさんがポツリポツリと大事なことを伝えてくれます。先生や親といった上下関係ではない、この“ななめ上の大人”もきらりと光る存在です。

なりたい自分も、やりたいことも、そんなこと今すぐわからなくていい。何か真剣に打ち込むことがあればそこから見えてくるものやつかめることがきっとある。まっすぐに一生懸命であることを応援してくれる爽やかな作品です。 (か)

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