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『みつきの雪』
眞島めいり 文/牧野千穂 絵
講談社 刊
2020年1月 発行
本体1400円+税
151ページ
対象:中学生以上
あした、わたしは高校を卒業する。同じく、隣にいる行人も。
去年の春に読み、「冬が来たら絶対に紹介したい!」と思っていた本です。
ようやく雪の季節が来たのでご紹介!
行人(ゆきと)は、小学5年生の時に、信州の村に山村留学として都会からやって来ました。
そこで、村で生まれ育った満希(みつき)と出会います。普通は、短い期間で去っていく「留学生」ですが、小学校を卒業しても行人は村を去りませんでした。そして同じ中学、高校に進んだ二人。
物語は、高3の卒業式から始まります。
小学校、中学校、高校時代の出来事を行ったり来たりしながら、満希の語りで進んでいきますが読みにくさは全くありません。逆に、時間を交差しながら物語が進むごとに、行人と満希、そしてそれを取り巻く人々の心模様が鮮やかに浮かび上がってきます。
なぜ、行人は5年生の時に、たった一人でこの村に来たのか?そしてなぜこんなに長く村に留まったのか・・・。
2019年ちゅうでん児童文学賞の大賞を受賞した作品です。選者の富安陽子さんが「言葉と言葉が響き合い読む人の心を震わせる」と評していましたが、なるほどうまいこと言うなあと思いました。ふたりの心模様と情景描写を描く言葉が見事で、まさに「言葉と言葉が響き合っている」という表現がぴったり。こんなにはっきり情景が心に浮かんだ作品は久しぶりです。読み終えた後に、心の中に心地よい残像が広がりました。
本書が第一作目。これからの活躍を楽しみに見守りたいと思います。 (く)
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