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『インド神話』
沖田瑞穂 編訳
岩波書店(少年文庫) 刊
2020年10月 発行
本体760円+税
300ページ
対象:小学校高学年以上

神々と悪魔、女神や英雄が活躍する、色彩あふれる神話の世界

日本人にとって一番なじみがあるのは、星座物語ともつながっているギリシア・ローマ神話ではないでしょうか。最近はマンガやアニメの影響で、北欧神話もかなり身近になってきましたが、同じアジア圏でもインド神話はどこか遠い世界のお話で、大人向けの専門書はあっても子どもに分かるように優しく書かれたものはほとんどなかったように思います。

著者の沖田瑞穂さんはインド神話と比較神話が専門の若い研究者です。込み入った物語を大胆に編集し、面白くかつ重要と思われるエピソードを選んで紹介しています。
全体は5部構成で、最も古いヴェーダの神話から始まって、神々の世界と人間の歴史が交わるところまで物語を進めていきますが、特に最初の方は、耳慣れない名前と登場する神々のややこしい関係におろおろしてしまう読者に寄り添ってくれるような書き方がなされているのも特徴です。

読むコツは一度ですんなり分かろうとしないこと。今まで出会ったことのない(私はそうでした!)奇妙で混とんとしてエネルギーに満ち溢れた物語に、先入観や常識を捨ててとりあえず身を任せてみましょう。
読み進めるうちに神話の波長とあなたの呼吸が合ってくればしめたものです。個性豊かな神々と徳の高い悪魔や妖艶な女神が入り乱れる摩訶不思議な読書体験を、心ゆくまでお楽しみください。(か)

☆大人には巻末の35ページに及ぶ解説も魅力です。各地の神話との比較により、世界に共通する部分とインド神話に特有の描かれ方がとてもよくわかります。解説を読んでから本編に取り掛かるのも、一つの手かもしれません。
沖田瑞穂さんは岩波ジュニア新書で『世界の神話』(900円+税)も著されていますので、神話の世界をより深く知りたい方はこちらもぜひどうぞ。

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