アメリカのミネアポリスで白人の警官が黒人の男性ジョージ・フロイドさんを暴行し死亡させてしまった事件は、世界中に人種差別に対する抗議行動を広げました。ニュースを見て心を痛めた方も多かったと思います。
私はこのニュースを見て、2018年に出版された『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ』を思い出しました。この物語では主人公の幼なじみの黒人の少年が白人の警官に射殺されるのですが、まさに現在のアメリカ社会が抱える問題をリアルに描いており、読者に様々なことを考えさせます。といっても決して重すぎるものではなく、10代の少女が向き合う葛藤(学校生活、両親、友人関係、恋人……)も描かれた第1級のエンターテインメントです。まだお読みでない方にぜひお手に取っていただきたいと思います。同じく2018年に刊行されたグラフィックノベル『MARCH』3部作は、アメリカにおける公民権運動の流れを50年に渡って描き出した傑作です。日本人の我々には学ぶ機会の少なかったアメリカの現代史を、コミックスタイルで知ることのできる貴重な作品ではないでしょうか。

上記2冊を中心に、アメリカの黒人の歴史を音楽やキング牧師の評伝などから探ってみる平台を作りました。差別や迫害は遠い国の出来事でも過去の歴史でもなく、現在進行形で私たちのすぐ隣にある問題です。まずはこれらの本を通してその問題を「知る」ことから始めてみましょう。

『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ あなたがくれた憎しみ』アンジー・トーマス著/服部理佳 訳/岩崎書店 1700円+税
『MARCH1 非暴力の闘い』ジョン・ルイス、アンドリュー・アイディン作/ネイト・パウエル画/押野素子 訳/岩波書店 1900円+税