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『ぼくたちもそこにいた』『若い兵士のとき』
ハンス・ペーター・リヒター 作
上田真而子 訳
岩波書店 刊 
2020年5月 復刊(初版1995年)
本体760円+税/720円+税
302 ページ / 246ページ
対象:小学校高学年以上

わたしは参加していた。単なる目撃者ではなかった。

1925年生まれのリヒターは、子ども~青春時代をナチス政権下のドイツで生きた“ヒトラーの子ども”でした。
代表作『あのころはフリードリヒがいた』は、アパートの上階に住むユダヤ人の一家とのかかわりを通して、ユダヤ人排斥が激しくなっていくドイツ社会を描いています。今回復刊になった2巻は、『あのころはフリードリヒがいた』に続く3部作としてぜひお手に取っていただきたい名著です。

第2巻『ぼくたちもそこにいた』は、幼なじみと共にヒトラー・ユーゲントとして熱心に活動した頃の記憶を、第3巻『若い兵士のとき』は、17歳で入隊してから20歳で敗戦を迎えるまで下士官として体験した軍隊生活を描きます。この2作は、著者自身の体験を脚色することなく事実として淡々と書ききっているところに、有無を言わせない迫力があります。子どもとして否応なく巻き込まれた戦争でありながら、当時を振り返った時に自分に対する言い訳や正当化が一切ないリヒターの姿勢は、その時代を生きた人間としての責任を引き受ける覚悟を感じます。
歴史を振り返ってナチスの時代を否定するのは簡単ですが、渦中に置かれた個人がどうなるのか、リヒターが3部作に込めた思いを私たちが真摯に受け止め自分事として考えなければ、また悲劇は繰り返されてしまうでしょう。 (か)

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