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『おやゆびちーちゃん』新版
アンデルセン 作
木島 始 訳
堀内誠一 画
福音館書店 刊
2020年5月 発行
本体2,000円+税
76ページ
対象:小学校中学年以上

新版で美しくよみがえった「おやゆびひめ」

これほどに愛らしい顔立ちで華奢さが際立ち、しぐさや言動から心根の優しさがにじみ出る「おやゆびひめ」はありません。ここには、この世で数多出版されているどの「おやゆびひめ」よりも心をつかまれる女の子が描かれています。
1967年12月に初版が発行されたこの美しい本は、木島始さんの訳で『おやゆびちーちゃん』と題されました。
絵を添えたのは堀内誠一さん。稀代のグラフィックデザイナーであり、絵本や児童書の分野でも才能を発揮した人物です。

この作品は「描き分け版」といって部分ごとに描き分けをし、それらを重ね合わせることで1枚の絵を作っています。画家が仕上がりをイメージしながら行うため、時間を要すことはもちろん力量と精神力も問われる作業です。

それからおよそ50年。
最新の技術により原画の鉛筆線の細かさ、色鉛筆の柔らかなタッチや濃淡がよみがえりました。その見事な様は色とりどりの花が咲き誇るシーンや森の緑が香るシーンに顕著で、それまでの版と見比べると「この部分にも色があったのか」と堀内さんのイマジネーションの広がりに感心します。

子どもの頃からこんなに美しいアンデルセンのお話に触れることができたら、それはそれは幸せなことでしょう!
読んであげるなら幼児から(私も子どもの頃に古い版で読んでもらっていました)、自分で読むのなら小学校中学年くらいからがおすすめです。 (い)

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