ベスト👍 フィクション
『ぼくだけのぶちまけ日記』
スーザン・ニールセン 作
長友恵子 訳
岩波書店 刊
2020年7月 発行
本体1,700円+税
286ページ
対象:中学生以上
忘れるなんてできないのよ。でも抱えて生きていく方法を学ぶことはできる。
ヘンリーの兄ジェシーは学校でいじめを受けていた。そして、いじめていた相手を銃撃し、自分も頭を撃って自殺した。
殺人者の家族となってしまったヘンリーたちは町を追われ、ヘンリーと父親は事件のことを誰も知らないところへ引っ越してひっそりと暮らし始める。
ところが、同じアパートに住む変わった住人たちや、学校でヘンリーにつきまとうオタクな少年などが、彼の生活に波風をたて……。
セラピーの一環で書くように勧められたヘンリーがいやいやながら書き始めた日記は、突然の事件で兄を失い、崩壊寸前の家族の中で怒りと悲しみを抱えた彼の苦しい心の内がつづられます。重いテーマなのですが、ヘンリーの書きっぷりはマジメなのにおかしいところも多く、読者は彼の心の動きを感じながら読み進めていくことができます。
何度も書きかけては消している「ジェシーの自殺1か月前の事件」とは何だったのか? これも読者の興味を引く重要なポイントです。心に複雑な傷を負う13歳の少年が、鬱陶しかったりイライラさせられたりする周囲の人々の存在によって次第に救われ強くなっていく様子から、私たちは「人は人によって傷つけられ、また癒される」という人生の真実を見出すのです。
物語の結末でヘンリーがつづった「今日はとてもいい一日だった。でも、明日はそれほどいい日じゃないかもしれない。(中略)でも、人生がこのまま続くってことも、ぼくはわかっている。」という言葉に、前を向いて一歩踏み出した少年の勇気を感じて、背中を押される読者も多いのではないかと思いました。 (か)
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