ベスト👍 ノンフィクション
『国籍の?(ハテナ)がわかる本』
木下理仁 著
太郎次郎社エディタス 刊
2019年4月10日 発行
本体1,000円+税
94ページ
対象:小学校高学年以上
わたしとはナニモノか――
今これを書いているわたしも、このページを読んでいるあなたも、日本語の読み書きができるでしょう。
なにをもとに自己あるいは他者を「〇〇人」と判断するかという問いを様々な国の人に尋ねた統計がありますが、それによると「ことば」を重要と考える人がもっとも多かったそうです。
では、不自由なく日本語を繰ることができるわたしやあなたは「日本人」?
確かに同じの言語を使う者同士は同胞意識が芽生えるものですが、それだけでは「〇〇人」であることを証明できません。
では、「国籍」が「日本」だったら「日本人」?
いいえ、その判断もいささか乱暴です。
日本では北海道や千島列島にはアイヌの人々が暮らしています。彼らの国籍は「日本」でも民族的アイデンティティはアイヌになります。同様にかつて琉球王国として栄えていた沖縄には自らを「ウチナーンチュ(沖縄人)」と意識している人々がいます。
つまり「国籍」は、“自分がナニモノか”という「アイデンティティ」とはイコールではありません。
そもそも「国籍」とはなんなのか、それを考える入口を授けてくれるのが本書です。
単なる解説本ではなく、つど読者に“考える”ことを促すことで社会に置き去りにされている差別や貧困、また埋没しがちな個性を見直すきっかけを与えています。
「きになる新刊リスト2019年度版」でも紹介しているブレイディみかこさんの『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮社)や温又柔さんの『「国語」から旅立って』(新曜社)と併せて読むと一層意識が高まるでしょう。
「わたしとはナニモノか」――その答えを導くすべは、本の中にあります。 (い)
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