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『荒野にヒバリをさがして』
アンソニー・マゴーワン 作
野口絵美 訳
徳間書店 刊
2022年2月28日 発刊
定価1,540円(税込)
160ページ
対象:小学校高学年から
雪の吹き荒ぶ中、兄弟の運命やいかに
春のはじまりのある日、ケニーとニッキーは退屈凌ぎに荒野にヒバリ観察のハイキングに出かけます。ケニーとニッキーはひとつ違いの兄弟。兄のケニーは特別支援学校に通っています。
兄弟はサンドイッチを作って鞄に詰めて、愛犬のティナを伴い連れ立ってバスに乗ります。ところが次第に雲行きが怪しくなり、バスの外では雪が降り出しました。
はじめは冗談を言い合って笑いながら歩いていたふたりですが、吹雪は視界を遮って体温を奪い、ついにニッキーは道を見失ってしまいます……。
容赦なく吹きつける雪の中、兄を心配して必死で帰路を見つけようとする弟と、弟をひとり残して先へ進むことを拒む兄。ふたりの絆の深さがページをめくるごとに顕著になり、読者を物語に引きつけて離しません。読み進めるうちに父親がアルコール中毒者であったことや精神不安定な母親が出て行ってしまったことなど家族の過去と現在が明らかになります。苦しい環境下にあってなお兄弟が擦れることなく生きていることに胸を打たれます。
子どもでも数時間あれば読み終えてしまう長さのストーリーですが、彼らの持つ豊かな愛と信頼は何者にも犯しがたい美しさを帯ています。その巧妙さに感服しました。
本作で2020年カーネギー賞を受賞した作者のアンソニー・マゴーワン。次の新作が気になる作家のひとりです。 (い)
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