ベスト👍 絵本
『あるヘラジカの物語』
星野道夫 原案
鈴木まもる 絵と文
あすなろ書房 刊
2020年9月15日 発行
本体1,500円+税
32ページ
対象:小学校中学年以上

写真が物語るもの

ぽっかりと開いた2対の穴。
かつて目があった場所は、肉体が滅びて骨になってもその黒々とした穴に炎をたぎらせ、にらみ合っているようーー。

2頭のヘラジカが角をからませたまま骨になった1枚の写真。
撮影したのは星野道夫です。

ある日、アラスカの川でふしぎな頭蓋骨を見つけた星野道夫は、その様子を写真に収めます。それは2頭の大きなヘラジカが角を複雑にからませたまま死んだものであり、角はどうやっても外れなかったと言います。
星野道夫と同い年でともに動物好きとあり生前から親交のあった鈴木まもるさんは、本書のあとがきでこう述べています。
『ある夜、寝ていて「この写真の絵本を作ろう」と目が覚め、アラスカに行きました。』

なぜ、2頭の角はからまっていたのか。
なぜ、そのまま死んでしまったのか。

現地に足を運んだ鈴木さんは、その答えを絵本という形を通して教えてくれています。
画面からあふれ出すヘラジカたちの熱や汗、四肢の躍動、とどろく唸り声は、想像を超えた迫力とリアリティに満ちています。

今、こうしている間も、地球上で繰り広げられている命の営みを雄弁に物語る写真。
その写真を撮った星野道夫の強い遺志が鈴木まもるさんに受け継がれていることに、ひどく心を揺さぶられました。(い)

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