福音館書店の古典童話シリーズに6年ぶりの新刊が登場しました。43巻目となるのは、動物文学の傑作フェーリクス・ザルテンの『バンビ』で、翻訳は「ベルリン」シリーズ他 大人向けのミステリーなども多数手がけられている酒寄進一さんです。
ディズニーアニメがあまりにも有名なので、“バンビ”と聞くとおめめぱっちりのキュートな小鹿を思い浮かべてしまう人が多いと思いますが、原作の雰囲気はまったく違います。本の帯に「あなたはバンビの本当の物語を知っていますか?」とありますが、本当のバンビを知ったらきっと驚かれることでしょう。けれど、アニメでは描かれなかった深くて美しいメッセージが、静かな感動として心に残ることは間違いありません。古典童話シリーズとしては短めの280ページほどで、お値段も手ごろです(笑) ぜひこの機会に本物のバンビに出会っていただきたいと思います!

個人的なことですが、私は岩波少年文庫版の上田真而子訳『バンビ 森の、ある一生の物語』(760円+税)が大好きです。旧版の高橋健二訳が名訳として知られていますが、上田さんの翻訳で読んだ時その美しさと深さ(同時に人間のむごさ)に打たれました。今度は酒寄さんがどんなバンビを見せてくれるのか、とてもワクワクしています。

『バンビ 森に生きる』フェリークス・ザルテン作/酒寄進一訳/ハンス・ベルトレ画/福音館書店 1800円+税

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