クリーンヒット⚾ フィクション
『モールランド・ストーリーⅢ ネバーウェディングストーリー』
ひこ・田中 作
中島梨絵 画
福音館書店 刊
2020年5月 発行
本体1,400円+税
304ページ
対象:小学校高学年以上

結婚て、なんのためにするの?

『メランコリー・サガ』『ロックなハート』に続くシリーズ3巻目。1巻目を読んだときは正直なところ、素直に物語を楽しめませんでした。主人公の子どもたちの設定に違和感を覚え、感情移入がまったくできなかったせいです。

都会の街に暮らす小学6年生3人組(ちょっと風変わりで、クラスでは浮いちゃう感じの子たち)の日常を描いたものですが、親近感がなさすぎて……。

主人公の「私」こと、コトノハの父親はゲーム作家、母親は子どもの本の作家。子どもたちの会話も大人っぽいというか、リアルな感じがしないというか。

ですが、本作はその大人っぽさがテーマと合致したように思います。
彼らが暮らす街に新しくホテルができ、そこで偶然、初めて「公開結婚式」を見たコトノハ。讃美歌、白いドレス、結婚指輪……華やかで、楽し気な雰囲気は別世界に感じます。「聞いたことはないけれど両親もこんな結婚式を挙げたのかな?」と疑問に思い、3人組の仲間と一緒に「結婚」について調べ始めます。

絶対に苗字をかえなきゃいけないのか、とか素朴なコトノハの「?」は「当たり前でしょ」と思う人には新鮮に感じるかもしれません。わたしは彼女の「?」に共感しながら読めました。

さすが『お引越し』(現在、福音館書店から刊行)でデビューしたひこさん!と膝を打った次第です。

昨今LGBTなどが話題になっているけれど、いきなりそれは……と思う人にぜひ、手にしてみてほしいと思いました。子どもたちにも世間の常識を疑う、考えるきっかけになる物語ではないでしょうか。

ただ、少し読む人を選んじゃうのかも、とも思ったのでした。(す)

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