ベスト👍 ノンフィクション
『中絶がわかる本』
ロビン・スティーブンソン 著
塚原久美 訳
福田和子 解説
北原みのり 監修
アジュマブックス 刊
2022年1月14日 発行
定価2750円(税込)
201ページ
対象:中学生から

もっと安全な中絶を! 私のからだは私が決める! ~女性の権利の視点から中絶を考える、性教育と人権の本

カナダ、アメリカを中心に世界中での中絶をめぐる闘いを公平な視点から描いた作品です。なんとなく中絶について語ることはタブーな雰囲気があるかもしれませんが、よく知ることは大切だと強く思いました。
これまであまり語られなかった中絶の歴史を通じて、中絶の権利を求めて闘う活動家を紹介しています。中絶の闘いは階級と人種の闘いといっても過言ではありません。そのことが痛いほど、わかります。
第1章「振り返ると:中絶の歴史」、第2章「中絶を求める闘い」、第3章「攻撃される中絶」、第4章「世界の安全な中絶を求める闘い」、第5章「進むべき道:最前線から届いた物語」といった構成。作者からの日本の読者のためのメモ、監修者の推薦の言葉、翻訳者による解説も理解の一助になる文章です。

中絶の闘いは決して過去の出来事ではなく、現在進行形の出来事であることを認識せねば、と考えさせられました。中学、高校の図書館や保健室にはぜひとも備えてほしい1冊。小学校の高学年の担任の先生にも一読をおすすめします。男女関係なく、若い人たちに知ってほしい内容です。少し難しく感じる記述もあるかもしれませんが、知ることが第一歩のになると信じます。
本書によれば日本の中絶事情は世界的にみて、とても遅れているとか。この本がきっかけになって前に進めばいいなと思います。

ちなみに「リブロダクティブ・ヘルス」という用語を久しぶりに見ました。25年くらい前に初めてこの言葉に出会い、衝撃を受けたことを思い出しました。性と生殖に応用された人権のこと。この概念が日本では広まっていないことを感じました。
そして本書は2020年シーラ・A・エゴフ賞、カナダ子どもブックセンター キッズ&ティーン向けベストブック2019推薦書、国際青少年図書館ホワイトレイヴンセレクション2019などの賞を受けています。 (す)

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