ベスト👍 ノンフィクション
『小さな出版社のつづけ方』
永江朗 著
猿江商會 刊
2021年11月16日 発行
定価1870円(税込)
249ページ
対象:中学生から

ビジネスモデルはみんな違ってみんないい

書店流通に造詣が深い著者による小さな出版社へのインタビュー集。パブリブ、ブルーシープ、三輪舎、など全9社のほかに町の本屋さん、東京・千駄木の往来堂書店にも話を聞いています。
文字通り、各社各様でその経営状況や本への思いもさまざま。

現在、出版界は決して明るいとはいえない業態です。そんな中、作りたい本だけを作って事業として成り立つのか? 会社をどうやって存続させているのか? を聞き出します。
読んでいて驚いたのが、前職でついてた出版社や雑誌の名前に聞き覚えのあるものが多かったこと。メタローグ社だとか鈴木書店だとか「母の友」とか、個人的に「知っている」名前が出てきて、なんとなく親近感を持ちました。

なかでも興味深かったのが三輪舎の話。小さい出版社をはじめたのは自分の暮らし方を考え直すためだったそうです。代表の中岡さんは現在、家事の多くをこなしながら仕事をされているのだとか。そこに至るまでのことが実直に語られていて「すごくいいな」と思いました。独立する前はそれこそ激務だったようで、人らしい暮らしを手に入れられたように読み取りました。

大手の出版社ばかりが出版社ではない。そんな当たり前(?)のことが当たり前に感じられる1冊です。著者のあとがきの最後のことばも心に残りました。
「わたしが小さな出版社に期待するのは、たんに執筆を依頼するだけでなく、その本の執筆と出版社を可能にするためのさまざまな手立てを書き手と一緒に考えてくれることだ」

出版という仕事の裏側を少し垣間見せてくれます。本が好きな人には知っていてほしいな、と思うことがたくさんありました。読み手それぞれに何かを感じ取ってくれれば、と思います。 (す)

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