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『オンボロやしきの人形たち』
フランシス・ホジソン・バーネット 作
尾崎愛子 訳
平澤朋子 絵
徳間書店 刊
2021年10月 発行
定価1540円(税込)
144ページ
対象:小学校中学年から
古くてぼろぼろだけど、やさしくて陽気な人形たちのお話。
おばあさんのものだった古い人形の家は、シンシアの8歳のお誕生日に新しいピカピカの人形の家が来たとたん、部屋の隅へ追いやられてしまいました。
この人形の家には5人のオランダ人形が暮らしています。家は古ぼけてオンボロ、洋服は破れたり擦り切れたりしていても、この“オンボロやしき”に住む人形たちはみな、どんなことでも楽しんでしまう明るい性格で、お話を作ったり、ごっこ遊びをしたりと毎日陽気にすごしていました。自分たちを追いやる原因になった“ピカピカ城”(新しい人形の家はこう呼ばれています)の高慢な住人たちをうらやむこともなく、彼らの華やかな生活を観察しては貴族の暮らしをまねして楽しむ――そんな気立てのいい人形たちを脅かす恐ろしい事件がおこります。なんと乳母が、オンボロやしきを燃やしてしまうと言うのです!
『秘密の花園』や『小公女』などの作品を著したバーネットの日本初紹介の物語です。
人形たちの境遇は見ようによってはかなり悲惨ですが、どんな時も物事の良い面を見てくよくよしない明るい性格は読者にもポジティブなエネルギーを注ぎ込んでくれます。何かあるとみんなで手をつないで輪になってぐるぐる踊り、最後は思い切り笑って床に倒れ込む――物語全体から常に元気な笑い声が溢れていて、本を閉じた後にもその声は心の中にこだまします。
「物語の根底を流れているのは「どん底の状況だって、心さえ明るく保っていれば、きっといいことが起こる」という信念」とは翻訳者の尾崎愛子さんの言葉。キマグレな妖精の女王さまが彼らに手を差し伸べてくれたのも、この心の持ちようが大きかったに違いありません。バーネットから子どもたちへ(そして私たちへ)の素敵な贈り物であるこのお話を、ぜひたくさんの方に楽しんでいただきたいと思います。(か)
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