ベスト👍 ノンフィクション
『僕たちはどう生きるか』
森田真生 著
集英社 刊
2021年9月30日 発行
定価1760円(税込)
205ページ
対象:中学生から

未来はすでに僕を侵食し始めている。

史上最年少で小林秀雄賞を受賞した、独立研究者の著者による最新刊。
日々の日記とともに著者がこのコロナ禍の1年、何を感じ、どう行動したのかが綴られます。

コロナウィルス感染拡大で行動が制限されるようになり、日本各地を数学をレクチャーするために飛び回っていた著者の日常は一変します。幼稚園児の我が子と一緒に自宅の庭を「もりたのーえん」とし、日々土いじりをしたり、昆虫をはじめとする小さな生きものの世話に明け暮れているそう。そのような中から生まれる思考とは?

この困難な状況であっても、著者の視線は物事の根本に向かっています。それは読んでいて、勇気づけられるものでした。
中でも印象的に感じたのは、家の近くを流れる川の源流を訪ねてみたことのくだり。このことから、自分が何に依存して生活しているのかに無自覚な現代人の意識を指摘します。そして無自覚でいることは環境の変化に対応できない、と言います。なるほどね、確かにわたしが子どものころと比べても格段に生活は便利になっています。そして、そのしくみが見えにくいものになっていると感じます。

不透明で不気味な時代。どう生きていくのか? 次世代へ「生命」をつないでいく術を生きてみながら、考えていこうと、結ぶのです。

「すばる」に連載されたものをもとに編まれた1冊。いつでも物事の本質を貫こうとする著者の姿勢にはただただ感動あるのみ。造本も美しく、カバーをはずすと…すてきなしかけも!! ぜひ買って、ご自分の目でお確かめください~。 (す)

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