クリーンヒット⚾ ノンフィクション
『国語をめぐる冒険』
渡部泰明、平野多恵、出口智之、田中洋美、仲島ひとみ 著
岩波書店 刊
2021年8月20日 発行
定価968円(税込)
227ページ
対象:中学生から

国語を使ってどう生きるか、「冒険」をモチーフに語ります!

「国語」をめぐる学びのモチーフを5人の研究者がそれぞれに語る、ユニークな1冊。「国語は冒険の旅だ」「言葉で心を知る」「他者が見えると、自分も見える」「言葉で伝え合う」「言葉の地図を手にいれる」の5章から成ります。

なかでも特に、第2章で紹介されている詩人・荒川洋二さんの言葉がとても胸に響きました。それは「すぐれた文学作品は、想像と思考を授けてくれる。人の心をつくる。人間の現実にはたらきかける。「文学は実学である」とぼくは思う」(『読むので思う』~「文学談義」)というものです。また、この引用の前に紹介されている一節も「なるほど!」と膝を打ちました。
「本を読むと、何かを思う。本など読まなくても、思えることはいくつかある。だが本を読まなかったら思わないことはたくさんある。(後略)」という文章です。確かに本を読まなくても景色を見たり、何かを食べたりして思うことはたくさんあります。でも、本を読んで思うことは、それらとは「思う」ことの深さが違うような気がするのです。

ほかに短いコラムですが、「旧字より新字が難しい!?」がとてもおもしろかった! 戦後になされたいわゆる漢字の改革についての考察なのですが、なんとなく見聞きしていたことがすっきりと提示されています。漢字にまつわる裏話といったところでしょうか。

本筋からは離れますが、挿絵を平澤朋子さんが描いていて、物語の挿絵で馴染んでいるわたしとしては「あ! こんにちは」って心地になり、なんとなく親近感を持ちました。文豪の似顔絵も描かれていて、こういうタッチの絵もあるのね、と発見でした。 (す)

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