ベスト👍 ノンフィクション
『新版 いっぱしの女』
氷室冴子 著
筑摩書房 刊
2021年7月10日 発行
定価770円(税込)
209ページ
対象:中学生から
30年前の名作エッセイが復刊! 今も変わらない「女」であることのもどかしさ…
「なんて素敵にジャパネスク」シリーズや『クララ白書』『ざ・ちぇんじ』など多くの少女小説を世に送り出してきた作家、氷室冴子。惜しまれつつ2008年に51歳と言う若さで逝去されています。
彼女の隠れた(?)名作に本書のエッセイがあります。皆さん、ご存知でしたか。
20歳の頃にコミックの「なんて素敵にジャパネスク」にはまり、そこから氷室作品を追ってきたわたしは、25,6歳の頃にこのエッセイに出会いました。
少し先輩の女性の言葉にすごく頷いて、読んだことを覚えています。
目次を拾ってみると「いっぱしの女の“夢の家”」「詠嘆なんか大嫌い」「とてもすばらしかった旅行について」「なるほど」「それは決して『ミザリー』ではない」……。
当時30歳を超えた著者の率直な思いが綴られています。なかでも今でもよく覚えているのが結婚した女友達と久しぶりに再会したとき、その友人は自分のことではなく夫や子ども、会社のことを話し続けていた。自身のことや著者とのことではなく…。共に過ごす大切な、たとえバカバカしくとも楽しい時間のはずなのに、相手の嘆きを聞くだけになってしまったことへの悲しみがそこにはあって、この友人のようにはなるまい、と思ったものです(「詠嘆なんか大嫌い」)。
セクハラという言葉をようやく見聞きするようになった当時、女であることで感じる世の中の違和感を鮮やかに書いた本書は今も古びていません。いや、今だからこそ見えるものもあるかも。
何回もページを開き、勇気づけられたことを思い出しました。今の若い人たちにも手にしてほしい。いや、年齢は関係ないですね。性別も。
世の中に「?」を抱いている人に届く何かがきっとあります。
氷室冴子という作家はもっと読まれていいし、もっと評価されていいと個人的には思います。
あ~、「ジャパネスク」が読みたくなった! (す)
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