ベスト👍 ノンフィクション
『計算する生命』
森田真生 著
新潮社刊
2021年4月15日 発行
定価1870円(税込)
239ページ
対象:中学生から

『数学する身体』から5年、壮大な論考がここに!

小林秀雄賞を受賞したデビュー作『数学する身体』から5年経ち、その間に著者が思い、めぐらせた思考の奇跡が本書です。今、読むべき、読まれるべき1冊かと思います。

“「わかる」と「操る」”、“ユークリッド、デカルト、リーマン”、“数がつくった言語”、“計算する生命”、“計算と生命の雑種(ハイブリッド)”の5章から成っています。

さて計算というと何をイメージされますか。著者いわく計算とは、➀指を使ってたし算をする、➁紙と鉛筆を使って筆算をする、③コンピュータを使って物理現象をシミュレートする、どれもが「計算」と呼ばれる手続きだそう。一般的にはまずここで「おお!」となるのではないかしら。➀や➁はイメージしやすいけど、シミュレートも計算っていうの? それについては「あらかじめ決められた規則にしたがって、記号を操作している」という意味で、同じ「計算」だと言います。ふむ。
ここに引用したのは「はじめに」で書いてあること。ここでつまずいてはいられません。少々難解なことばに慄いてしまいそうですが、丁寧に順を追って記述されているので信じて読み進めましょう。すると、視界が開けてきます!

第4章や最終章では「計算」からは程遠いと思われる人口言語や環境の気候変動にまで言及しています。その視点にはどこに属さない「独立研究者」だからこそのものかと思います。

前書から一番変わったことは子どもが生まれたことだと言います。子どもの生命力からうけとる思考も多いのでは、と感じました。これから著者、森田真生さんがどこに向かうのか、楽しみです。(す)

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