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『バンビ 森に生きる』
フェーリクス・ザルテン 作
ハンス・ベルトレ 画
酒寄進一 訳
福音館書店 刊
2021年3月15日 発行
本体1800円+税
283ページ
対象:小学校高学年から
あなたはバンビの本当の物語を知っていますか?
『バンビ』は、これまでにもいろんな形で翻訳されてきているのでご存知の方も多いでしょう。そしてディズニーアニメのみしか知らない人も多いのでは? と思います。アニメの印象が強いかもしれませんが、原作は甘さを一切排除した、自然で生き抜く野生動物のすごみすら感じる作品です。
森でうまれたバンビはさまざまな動物たちと触れ合いながら、喜びや悲しみ、そして孤独や恐怖の体験を通して大人のノロジカに成長していきます。バンビを導く古老は生き抜くためのを自らの行動で諭します。気配もなく登場する古老は、読んでいて威厳を感じ背筋がしゃんと伸びるようです。かっこいい!
バンビをはじめとする動物たちの描写も素晴らしく、読み進めるうち自分が同化していくようでした。そして自然描写もまた、美しく、すべてが目に浮かぶーー。実際の森は体感したことありませんが、陽の光や風を感じました。草の匂いすらしてくるようでした。
それらは翻訳者がオーストリアの湖畔で本書の翻訳をされたためかもしれません。実体験に伴った感覚がいきているように思います。酒寄さんのこれまでの翻訳作品とは趣が違うように感じたのもそのせい!?
このエピソードを含め、あとがきも大人は必読です。わたしは作者のことをまったく知らなかった、とここを読んで思いました。ザルテンのことや作品についても、詳しく書かれています。動物文学全集として全7巻が以前、日本でも翻訳されていたとは! そのなかで『バンビ』が残ったのは功罪ありますが、ディズニーのおかげといえるのかもしれません。
生きるとは? を問う人と自然のつながりも考えさせられる動物文学の名作です。アニメで終わらず、ぜひこの1冊に出会ってほしいと心から思います。 (す)
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