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『カラスのいいぶん 人と生きることをえらんだ鳥』
嶋田泰子 著
岡本順 絵
童心社 刊
2020年12月15日 発行
本体1200円+税
133ページ
対象:小学校中学年から

カラスのこと、どれくらい知っていますか? 

わたしたちの暮らしの中で一番といってもいいくらい身近な鳥、カラス。皆さんはどんなイメージをもっていますか。ゴミをちらかすとか、人を襲って怖いとか、あんまりいい印象はもってないかもしれないですね。かくいうわたしは……カラスはおもしろいので好き。見ていて本当に飽きません。高校生の頃、部活で鳥の観察をしているときによく、トンビを集団で追いまわしているのを見たものです。

さて本書は、カラスにさんざんな目にあって嫌いだったという著者のカラス観察記録です。嫌いだったせいで相手を知ろうとしてよく観察するようになったそう。そうして見ているうちに家の近くにやってくる「じょうれんさん」のカラスに名前をつけ、日々の行動を追うようになりました。彼らには時間割があることや、縄張り争いのこと、子育ての様子も紹介されています。
いくつもあるエピソードのなかで特におもしいと思ったのが、最初に紹介されている「たまごどろぼう」のくだり。カラスは本当によくヒトを観察しているのだと思います。

著者の嶋田さんが観察していたのはカラスのなかでも「ハシブトガラス」と呼ばれる種。よく見るのはこのハシブトガラスか、ハシボソガラスのどちらかです。名前の通りくちばしが太くておでこがでっぱているのが「ハシブトガラス」。くちばしが細くておでこのカーブがなだらかのが「ハシボソガラス」。見慣れるとすぐにどっちかわかるようになります。ほかに声も違うし、歩き方も違うんですよ。

人間中心に考えると確かに厄介者かもしれませんが、タイトルにあるように「カラスのいいぶん」を聞いてみると違った景色が見えてくると思います。本当に厄介者なのか、自分の目で確かめてみてください。 (す)

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