ベスト👍 ノンフィクション
『他者を感じる社会学 差別から考える』
好井裕明 著
筑摩書房 刊
2020年11月10日 発行
本体880円+税
255ページ
対象:中学生から

他者を理解したいと思ったときに生じる摩擦熱、それが「差別」

本書の「はじめに」で大学教授である著者が学生と交わしたやりとりが紹介されています。“スマホを通したコミュニケーションの最大の問題点は何か”というもの。なかで最も多い回答が「相手の顔が見えない」という点だったそうです。そのことを突き詰めて考えると、他者を人間として感じない日常は、他者を差別し排除できる日常だと言います。

そうして本章で「差別とはどんな行為か」「差別を考える二つの基本」「カテゴリー化という問題」「人間に序列はつけられるのだろうか」など九つの章立てで考えています。具体的な例をいくつも挙げて論じられているので(映画「パッチギ!」や「映画 聲の形」など)、とてもわかりやすい。そして文章がとても読みやすいーーこれは日常的に学生と接しているためかと思われますーー。語られていることがイメージしやすいので、どれも身近な問題として迫ってきます。

最近も立場のある人の発言が女性差別だ、と話題になりました。どういう点が問題なのか、本書を読むことで理解を深められると思います。一時の話題で済ませないことが大事ではないでしょうか。

他者への想像力をもつことの大切さ、重要性を強く考えさせられます。差別は許されることではないけれど、今も残念ながら存在します。その差別を「いけないこと」として断じて終わらせず、実態をよく見て、考えていこうという気持ちになりました。多くの人がその気持ちをもつことで、少しずつ世の中が変わっていけばいいなと思います。 (す)

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