クリーンヒット🥎  絵本
『アイヌのカムイユカ(神謡)より シマフクロウとサケ』
宇梶静江 古布絵制作・再話
藤原書店 刊
2020年12月 発行
本体1800円+税
31ページ
対象:幼児から

伝統的なアイヌの刺繍が美しい、アイヌ神謡の世界

両親が北海道札幌出身だったせいもあり、幼いころより「アイヌ」という存在は薄ぼんやりとですが知っていました。
お土産屋さんで売っている「アイヌ昔話集」などもおこづかいで買っていたものです。
この絵本の表現方法である伝統的なアイヌ文様もなんとなく馴染みのあるものでした。

本書は幼少期をアイヌ集落で過ごした作者が、アイヌ伝統の刺繍を生かし、アイヌ神謡の世界を描いたものです。
深い紺色の生地に刺繍されたアイヌの守り神シマフクロウヤサケがいきいきと描かれます。

退屈して海辺へやってきたシマフクロウは、サケの群れに出会います。先頭のサケは仲間のサケに「尊いシマフクロウのカムイチカがおいでなるぞ。おそれつつしみなさい」と告げますが、最後にやってきたサケたちは「いったい何のカムイだい。おれたちがおとなしくしなければならないんだい」と繰り返し言いながら海の水をまきちらしました。そんな無礼な態度に腹をたてたシマフクロウは…。

アイヌ語特有の「フカト フカト」とか「テケテケ ホリピリピ」といった言葉が表記も含め、馴染みのないわたしには面白く聞こえます。
そして、それが独特の世界観を醸すのに一役買っていると思いました。

以前他社から刊行されていた絵本の復刊。復刊に際し、「この絵本の『古布絵」のオリジナル」として原画の全体像を収録しています。この絵だけ見てもすてきです。シマフクロウの大きな目がとても印象的で心に残ります。
少し前に刊行されている同じ著者による『大地よ! アイヌの母神、宇梶静江自伝』(藤原書店)も気になります…。 (す)

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