ベスト👍  絵本
『シェルパのポルパ エベレストにのぼる』
石川直樹 文
梨木 羊 絵
岩波書店 刊
2020年5月 発行
本体1,800円+税
32ページ
対象:小学校低学年以上

ベスト👍  絵本
『富士山にのぼる』
石川直樹 著
アリス館 刊
2020年6月 発行
本体1,400円+税
43ページ
対象:小学校中学年以上

やまない登山ブームに夏ともなると多くの人が山に向かい、ニュースでは山頂まで人々が長い列をなす映像を目にします。
ところが今夏は新型コロナウイルス感染症の影響で山小屋も休業を余儀なくされるなど、山を生業にしている人もまた厳しい現実に行き当たっています。
そんな中、写真家であり登山家や冒険家としても知られる石川直樹さんの絵本が2冊続けて出版されました。

シェルパの男の子が主人公の冒険絵本シリーズ
まずは山岳民族のシェルパの男の子を主人公にした絵本『シェルパのポルパ エベレストにのぼる』(岩波書店)。
ヒマラヤの麓で生まれたポルパは山に登る人々の案内人として、重い荷物などを運ぶ仕事をしています。
ポルパの夢はいつかその山々に登ること。テンジンおじさんに訓練をしてもらい、いよいよエベレストに登る日がきました――。

標高の高い山ほどアタックする
には技術と経験が不可欠。さらに、山頂の限られたスペースに立てるのはごく限られた人数であり、登山家が登頂の成功を祝う陰には彼らに登頂を託した同行の登山家たち、そしてポルパのようなシェルパたちの存在があります。
奥付に石川さんが添える「安全なヒマラヤ登山は、彼らの働きなしには成立しません」という言葉の先を思う時、また一歩、心が山に近づきます。

ダイナミックな富士山を間近に
そして嬉しいことに、石川さんが初めて手掛けた写真絵本『富士山にのぼる』(アリス館)が増補版として新たに刊行されました!(底本は同タイトルで教育画劇刊)

本作では、真冬の富士山に挑む石川さんがゆっくり着実に歩を進めて山頂に立つ様子が写真とともに綴られています。
日の光に反射する白銀の斜面、眼下に広がる街々の明かりは心を震わせ、テントで作る食事からは今にも香りが漂ってきそう。まるで山行を一緒しているかのように感じられるこの絵本は自然の豊かさや雄大さを示してくれるだけではなく、命の源をたどる旅のようにも感じられます。

と力説してしまいましたが(汗)、どちらも今こそ開いてほしい作品ですのでどうぞお見逃しなく! (い)