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『子どもを守る言葉 「同意」って何? YES,NOは自分が決める!』
レイチェル・ブライアン 作
中井はるの 訳
集英社 刊
2020年10月 発行
本体1600円+税
74ページ
対象:5歳から

誰もが互いを尊重しあう幸せで安全な社会をつくるために

本書で示されている「同意(consent)」の意味は、おそらく多くの人が自覚することなく生活しているのではないでしょうか。子どものために(実際には子どもを性被害から守るために)作られた本ではありますが、ここに書かれていることはまず大人が自覚し実行しなければならないことばかりです。

そして「同意」とは何かの話をする前に、もう一つ理解しておかなければならない大事な概念が「バウンダリー(境界線)」です。読んで字のごとく「自分と相手を区切る線」のこと(それは相手、もしくは状況によって変わる場合がある)で、バウンダリーを決めるのはあくまでも自分だということがとても重要な前提となっています。

つまり「同意する(自分)/同意をもらう(相手)」ためには、自分がしたいこと・したくないこと・してほしくないことを相手に伝えなければならないですし、もし相手からはっきりとしたYESの意思表示がなければ「同意」ではないということが、この考えにおいては非常に重要なのです(「〇〇だと思った…」などというのはダメ!)。
「同意」は、思い込みを捨て常に相手に聞いて確認するという丁寧なコミュニケーションの上にのみ成り立つ、人間関係の極意といえるでしょう。

自分の気持ち(直感)を大切にし、正直な気持ちを相手に伝えるというのは、空気を読むことが何より重要とされるこの社会においてとても難しいことです。でもまず大人自身が勇気を出して変わらなければ、子どもたちに「自分を大切にして」とは伝えられないはず。
たとえ相手が怒っても、イヤなことは嫌と言っていい。そういうキミは絶対に悪くない! そう力強く断言してくれるこの本を読んだ子ども(と大人)が、自分のバウンダリーを大切にするのと同じように、周りの人のバウンダリーも尊重する人になれるよう、後押しをしたいと感じました。(か)

※漫画調の書き方を見て軽そうと見くびってはいけません。例は具体的でわかりやすく、翻訳の工夫もあって非常に読みやすくためになる本になっています。

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