ベスト👍 ノンフィクション
『読書からはじまる』
長田 弘 著
筑摩書房 刊
2021年5月10日 発行
定価792円(税込)
223ページ
対象:大人

読書の原点に帰る

本を読む、とはどういうことでしょう。
長田弘さんはこう言います。
「本は読んでも忘れることができる。忘れたらもう一回読めばいいという文化なのです。」

いくら心に残る本に出合ったとして、時間がたつとその内容を忘れてしまうのは必然的であり、だから人は繰り返し本を読む。しかし、大切なのは、本を読むか読まないかという行為そのものではなく、「自分にとって本を読みたくなるような生活を、自分からたくらんでゆくこと」だと説きます。

そんな長田さんが「じつは大人こそ読むべき本にほかならない」と語るのが、子どもの本。
それはなぜか。
心を打つ言葉が続きます。
「子どもの本という概念を成立させているものが何かを突きつめて考えて、子どもの本についての、これまでのような『子どもだけが読むべき本』とするような考え方の縛りになっている先入観を崩してゆく。そうすることで、子どもの本の世界を、子どもたちと大人たちとが一緒にそこにいる想像力の場にしてゆかないと、子どもたちの世界からも、大人たちの世界からも、何か大切なものがこぼれていってしまうのではないかと怖れます。」

けして難しい言葉の羅列ではない、読者の心にすっと染み入る文章の清澄さ。それこそこれは再読したい本にほかなりません。 (い)

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