クリーンヒット⚾ ノンフィクション
「おんまつり たくさんのふしぎ2020年12月号」
岩城範枝 作
小西英子 絵
福音館書店 刊
2020年11月 発行
本体700円+税
40ページ
対象:小学生以上
「見るには7年かかる」といわれる、「春日若宮おん祭り」とは
日本全国にはさまざまなお祭りが伝承されていますが、奈良の春日大社に伝わる「春日若宮おん祭り」は890年近く休むことなく行われてきた非常に古いお祭りです。
12月17日の午前0時から始まるおんまつりは、24時間のお祭りで夜通し続きます。1年の中でたった1日だけではありますが、このお祭りには神主や巫女だけではなく、多くの地元の人々が関わっているのです。
昔の衣装を着て大通りを練り歩く華やかな行列はもちろん、舞いを舞ったり流鏑馬をする小学生は数か月も前から稽古を重ね、お祭りが近づくと神主と同じ厳しい決まり事を守って精進(神さまを迎えるために心身を清める)し、おんまつりに備えるのです。
お祭りというとにぎやかでどこか浮かれた気分を想像してしまいますが、ここに描かれているのは奈良の人たちが大切に守ってきた若宮さまを敬う心が「おんまつり」という形をとっている、まさにその姿です。神さまを楽しませ、喜ばせるために、自分たちのできる精いっぱいの芸能を奉納する――しんと静まり返った空間に歌舞音曲が響くとき、そこにいる人たちの心には穏やかで満ち足りた思いがあふれているに違いない、そんなことが想像されます。
この絵本の素晴らしいのは、お祭りを代表する色とりどりの美しい装束が丁寧に描かれていることです。色や形、文様それぞれには1000年以上前のアジアの国々から伝わってきた歴史あるものも多く、日本が様々な国の影響を受けてきたことを示しています。
実際に見ることはかなわなくても、絵本を開けば自分もお祭りをその場で見ているような気持ちにもさせてくれます。
美しく魅惑的なおんまつり、7年かけても見ることができたら……と願わずにはいられません。(か)
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