いつもだったら待ちに待った夏に気分が高揚するのに、今年は遊びにも旅行にも行かれなくてしょんぼり……という方が多いはず。
「街中はだめでも、“密” になりにくい自然の中だったらいいのでは?!」という考えが頭をよぎりますが、目的地までの移動や万が一事故にあったり遭難したりしたら、と想像するとやはり不要不急の外出はためらわれますよね。
一般的に自然の中を歩く際はなるべく少人数で、間隔をあけて、大声でおしゃべりをしないなどを心掛ければマスクは不要といわれています。「抑制されていた気分がリフレッシュされるのでぜひ!」と推奨したいところですが、声を大にして提唱できないのが悲しいところ……。
そこで、本を通じてほんの少しでも風が木々を抜けるざわめきや深い緑の香りを感じてもらいたいと、YA棚で「山がよんでいる」と題したフェアを行っています。
YAのフェアとあって、中にはスリリングな小説やエッセイなど普段のナルニア国ではお目にかかれない作品も。とりわけおすすめの書籍をいくつかピックアップしますので、ぜひこの機会にお手に取ってみてください。
①『街と山のあいだ』若菜晃子 著/アノニマ・スタジオ 刊/本体1,600円+税
②『TOKYO MINI HIKE 東京近郊ミニハイク』若菜晃子 文/羽金知美 写真/小学館 刊/本体1,200円+税
どちらの書籍も、ナルニア国イチオシの「murren」(vol.22「岩波少年文庫」特集/vol.26「模様」特集)の著者・若菜晃子さんが手がけています。
実は若菜さん、長年、山と渓谷社で山の専門雑誌「山と渓谷」などの編集に携わっていました。そこでの経験やご自身の山歩きを通じて編まれた本が『街と山のあいだ』です。
「どんな山も、山は皆すばらしい。」という言葉にあるように、標高の高い山や登頂までのルートが険しい山にアタックすることだけが山歩きのすばらしさではありません。アルプスも里山も、それぞれに楽しみ方があって登山に鋳型はないことを教えてくれるエッセイは、読んでいるとふっと肩の力が抜けて心が軽くなります。
また『TOKYO MINI HIKE 東京近郊ミニハイク』は若菜さんがおすすめする東京近郊の山をルートや所要時間、見どころなどとあわせて紹介した1冊。これから山登りを始めようと思っている人、登るのはハードルが高いけれど自然の中を散策したいという人にぴったりです。
③『きみが住む星』池澤夏樹 著/文化出版局 刊/本体1,000円+税
評論家や翻訳家として幅広く活躍する池澤夏樹さんが旅先から愛する人につづった手紙。
かのロバート・キャパに認められた写真家エルンスト・ハースの写真と交互に掲載される文章の数々は、池澤さんが各地で出会った風景、人物、もれ聞いた話を家で待つ“きみ”に絵はがきというかたちで届けています。
アンデスの山頂から眺めた朝焼けを最後に朝焼けのコレクションをやめた男の話、魔法使いがすむという家のことーー。離れている誰かを思うことがこんなにも清らかで切ないことをまざまざと感じさせる文面です。
もし、私のもとに洒脱なつくりのこの本が手紙と一緒に届いたら……その人に恋をしてしまうかも。なーんて。
④『クライマーズ・ハイ』横山秀夫 著/文藝春秋 刊/本体760円+税
1985年8月12日に御巣鷹山で発生した墜落事故。未曽有の大惨事となったこの事故を、当時実際に地元群馬の上毛新聞記者であった著者が渾身の思いで作品化した小説です。
事故の真実を探って奔走する記者たち、組織のうごめく思惑、すれ違う親子の心。細かに描かれたストーリーに手に汗握ったり心を揺さぶられたりと、一気読み間違いなし。
毎年この時期になると行われる慰霊登山、私たちも今いる場所からそっと手を合わせずにはおれません。
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